2017 Fiscal Year Research-status Report
Toll様受容体による内在性レトロウィルス制御機構の分子基盤解明
Project/Area Number |
17K19548
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 健介 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60229812)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | Toll様受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトやマウスのゲノムには内在性レトロウィルスが8-10%含まれており、様々な環境変化において活性化され、様々な疾患に関与する。内在性レトロウィルスの活性化は、核酸特異的Toll様受容体(TLR、Toll-like receptor)によって制御されている可能性が示されつつある。核酸特異的なTLR3、TLR7、TLR9を全て欠損したマウスでは、内在性レトロウィルスが恒常的に活性化され、結果としてT細胞腫瘍が発生し、個体死に至る。核酸特異的Toll様受容体による内在性レトロウィルスの制御は個体の恒常性維持に必須であることを示す結果である。TLR3、TLR7、TLR9の中でも特にTLR7が直接内在性レトロウィルス由来のAluと呼ばれるRNA配列に応答し、内在性レトロウィルスに対する抗体産生を誘導する。内在性レトロウィルスによるTLR7の活性化は、一方で自己免疫疾患を誘導する可能性がある。Ro60はSLEなどの疾患で検出される自己抗体の抗原である。Ro60は、Alu配列に結合し、内在性レトロウィルスの活性化を防ぐ。Ro60に対する自己抗体の産生は、Ro60と内在性レトロウィルスが自己免疫疾患において、TLR7を活性化している可能性を示している。 本研究においては、内在性レトロウィルスの活性化機構、TLR7による内在性レトロウィルスの認識機構及び制御機構について解析を進める。具体的には、Ro60とTLR7の関係について検討する。すでにRo60の遺伝子欠損細胞株、マウスを作製しており、TLR7の応答性についても検討した。残念ながら、予想したような、TLR7の応答性亢進は認められなかった。現在、TLR7の抗応答性を示すマウスとの交配を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Ro60を欠損させた細胞株、マウスを予定通り作成し、TLR7を中心に応答性を計画通り検討した。内因性レトロウイルスが制御できなくなるために、結果としてTLR7が活性化される、あるいは応答性が亢進することを予想していたが、残念ながらそのような表現型は認められなかった。個々で、TLR7の応答性に何らかの変化が認められないと、次の展開に進むことは難しいと判断した。したがって、当初予定していた細胞株の実験は一旦中止し、マウスでの解析に絞り込み、TLR7応答が亢進しているD34A Unc93B1ノックインマウスと交配することで、TLR7とRo60の両方が関与する表現型が検出できる可能性を検討することにした。既に交配は始めている。今年度中には、マウスの交配が終了する予定である。マウスでの表現型が検出され次第、それに相当する細胞株も作成し、当初予定していた実験計画を再開できると期待している。さらに、Ro60に加えて、他の内在性レトロウイルスの制御に関わる他の分子についても、TLR7応答との関係について検討する。例えば、APOBEC3などの分子について、遺伝子欠損細胞株を作成し、TLR7の応答性について検討する。もし、応答性が変わるようであれば、遺伝子欠損マウスの作成についても進めてゆくことにする。APOBEC3については、マウスとヒトで大きく異なっていることが知られている。ヒトの場合は、APOBEC3が複数の遺伝子からなるファミリーを形成している。そこで、ヒトの細胞株を用いて、これらの遺伝子欠損マウスを作製し、TLR7の応答性について検討する。APOBEC3に加えて、DICERなどの分子も内因性レトロウイルスの制御に関わっていることが報告されている。そこで、この分子についても同様に、遺伝子欠損細胞株を作成し、解析する。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたRo60については、細胞株の解析や遺伝子欠損マウスの解析で、予想したTLR7応答の亢進が認められなかった。そこで、TLR7の応答性が亢進しているマウスと交配することで、Ro60とTLR7の関係を個体レベルで明らかにする方向に進めることにした。いったん、表現型が得られれば、それを手掛かりに細胞株を用いた解析も含めて展開することが可能となる。また、個体レベルの表現型のほうが細胞株を用いた表現型よりは重要性が高いことからも、固体から入る計画は妥当であると考えている。Ro60についての解析で、予想した結果が得られなかったことから、Ro60に加えて、新たな分子の解析を加えることにした。すでに多くの分子が内因性レトロウイルスの制御に関与していることが報告されている。例えばAPOBEC3などのRNA Editing enzymeやDICERなどのRNaseである。これらの分子が内因性レトロウイルスの制御を介してTLR7の応答性制御に関わっている可能性についても検討する。これについては、Ro60で予定していたように、遺伝子欠損細胞株を作成し、TLR7の応答性を検討する。もし、何らかの変化が認められるようであれば、遺伝子欠損マウス作成も考慮する。内因性レトロウイルスの制御に関わる分子の検索については、これらの分子の解析が終わり次第進めてゆく。これらの解析を進めることで、TLR7による内因性リガンド認識に分子基盤解明を目指す。
|
Research Products
(5 results)