2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of methodology for in situ genomic analysis
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17K19558
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯田 哲也 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (90221746)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | ゲノム / メタゲノム / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
深海を含む地球環境には、いまだ同定されていない微生物が無数存在している。また、ヒト臨床検体において、形態学的には微生物らしきものが組織中に観察されるが培養や核酸の検出ができず正体が不明なケースがある。本研究では、電子顕微鏡により観察される微生物の遺伝情報を獲得するための方法論を構築することを目的とする。また、方法論が確立した後に、深海由来およびヒト臨床由来の試料を用いて、試料中に存在する微生物の遺伝情報の解析を行い、それらの遺伝情報について明らかにする。具体的には、微生物様構造の存在を確認した電子顕微鏡観察用の超薄切片から核酸を抽出し、そのドラフトゲノム配列を決定するまでのプロトコールの開発を目指す。 本年度の実績 1.電子顕微鏡観察用に微生物を包埋した樹脂からの、微生物ゲノムの回収のための条件検討を、酵母をモデル生物として行った。通常、透過型電子顕微鏡による観察にはサンプルをオスミウムアセトン液等で固定するが、微生物核酸への影響を考慮し、エタノール、アセトン等での固定を試み、核酸回収効率を検討し最適な方法を決定した。回収効率の検討は、酵母のITS領域およびrRNA遺伝子領域に対する定量PCRにより行った。回収される微生物核酸は微量であることが想定されるので、最終的にドラフトゲノム解析にまでもっていくためは、回収核酸の増幅が必要である。いくつかの全ゲノム増幅法を検討することにより、回収核酸を次世代シークエンス解析にまでもっていくために最適な増幅法を決定した。また、超薄切片からの微生物核酸の回収方法について検討を行った。 2. 1で確立された電子顕微鏡観察用包埋樹脂からの微生物ゲノム回収法を、海洋 由来試料に用いることで本法の有効性について検討するために、海洋由来試料の入手を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酵母をモデル生物として電子顕微鏡観察用に微生物を包埋した樹脂からの微生物ゲノムの回収のための条件検討についてはほぼ目標を達成した。包埋試料からの微生物ゲノム回収について、ほぼ条件を決定できた。また全ゲノム増幅法のプロトコールも決定した。解析を行う海洋由来試料に関しては、協力機関との調整等で入手に時間を要し、当該年度内の検体の入手にとどまった。一方で、電子顕微鏡観察用の包埋樹脂からの微生物ゲノム回収法に関しては、当初の計画を越える進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋由来試料からの微生物ゲノム回収を進める。回収条件の確立後に、当初計画の通り、深海由来試料を用いた微生物の検索、およびヒト臨床由来試料からの微生物遺伝情報の検出を遂行する。
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Causes of Carryover |
本年度は、電子顕微鏡観察用の包埋樹脂からの微生物ゲノム抽出の条件検討が実験の中心であり、また海洋試料の入手が遅れたこともあり、コストのかかる次世代DNAシークエンサーを用いたゲノム解析を行わなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。来年度はこれらの試料のゲノム解析を当初の予定通り行うので、本年度および次年度のために請求した助成金は当初計画通り使い切る予定である。
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