2017 Fiscal Year Research-status Report
ムンプスウイルスの特徴的な腺組織・神経トロピズムの分子基盤の解明
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17K19563
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柳 雄介 九州大学, 医学研究院, 教授 (40182365)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | ムンプスウイルス / 膜融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
ムンプスウイルスは、エンベロープ上のHN蛋白質とF蛋白質の働きによる細胞表面での膜融合により細胞に侵入する。HN蛋白質がシアル酸を末端に持つ糖鎖受容体に結合すると、膜融合に必要なF蛋白質の構造変化を誘導すると考えられている。 また、同じメカニズムで、感染細胞と周りの細胞が膜融合を起こし、その結果、多核巨細胞(合胞体)が形成される。HN蛋白質とF蛋白質の発現により膜融合を起こすVero細胞のcDNAライブラリーを多数のクローンからなるプールに分け、個々のプールから精製したプラスミドDNAを、HN蛋白質とF蛋白質の発現によって膜融合を起こさない細胞株に、HN遺伝子、F遺伝子と共に導入した。 この細胞に膜融合を起こすことができるプールを更に分割し、最終的に単独で膜融合を誘導できるcDNAクローンを分離した。その結果、蛋白質X、蛋白質Y をコードしている異なる2つのクローンが同定された。意外なことに、この細胞には、X、Yをコードする遺伝子は発現しているが、外からさらにいずれかの遺伝子を導入することがこの細胞が膜融合を起こすのに必要であることが分かった。免疫沈降により、蛋白質XはムンプスウイルスF蛋白質と相互作用しており、F蛋白質は外から蛋白質Xを導入することにより効率良く開裂された。一方、蛋白質 Y はHN蛋白質、F蛋白質の両方と相互作用していた。以上の結果から、蛋白質XはF蛋白質のプロセッシングに、蛋白質Yはそれ以外のメカニズムでムンプスウイルスによる膜融合あるいは細胞侵入に関わっていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ムンプスウイルスHN蛋白質とF蛋白質の発現により膜融合を起こさない細胞株を、膜融合を起こすようにできる宿主蛋白質を2種類同定した。ウイルスによる膜融合および細胞侵入におけるこれらの蛋白質の役割について現在解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
宿主蛋白質Xと蛋白質Yのどのドメインや残基がムンプスウイルスのエンベロープ蛋白質(HN蛋白質、F蛋白質)との結合に重要かを明らかにする。また、同定された蛋白質の発現する細胞や臓器とムンプスウイルスのトロピズムが相関するか検討する。shRNAによるノックダウンやCRISPR/Cas9によるノックアウトにより膜融合や感染がどうなるかを調べる。これらの解析により、発現クローニングにより同定された蛋白質の機能を明らかにする。他の動物種におけるorthologue分子の機能を解析し、ムンプスウイルスの宿主域がorthologue分子の機能の有無で説明されるか調べる。もし、マウスのorthologueに機能がないことが分かれば、ヒト分子とのキメラを作製することにより機能を決定している配列を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究費を獲得する前の予備実験の段階で購入していた試薬等を本研究に効率よく使用したため、29年度の研究費を大幅に削減できた。30年度は、これまでの研究成果に基づいて研究を推進するために試薬やプラスチック容器などかなりの物品費が見込まれる。また、学会での研究成果発表のための旅費が必要である。
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