2017 Fiscal Year Research-status Report
メタファージゲノム解析法の開発によるヒト腸内に広がるリアルファージワールドの解明
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17K19564
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 哲也 九州大学, 医学研究院, 教授 (10173014)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 微生物 / バクテリオファージ / 腸内フローラ / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度の第一目標は、今後の大規模解析の基盤となる解析手法の確立であるため、まず1検体の健常人由来糞便サンプルを対象としてディープな配列解析を行う計画であったが、Nanoporeを用いたシーケンシング法の評価、サンプル調整法などの至適化が必要となった。また、福岡県内のコホート研究からサンプルを収集することになっていたが、その計画立案と倫理審査に時間を要し、ヒト由来サンプルの使用ができなかった。さらに、10X Genomicsの学内導入が中止となり、外部の業者にライブラリー作成を依頼する必要が生じた。そこで、今年度は以下の解析を行った。 (1)ウシ糞便を用いて、各種濃度のMMCを含む増菌培地中で糞便を培養した際に誘発されるファージ粒子の精製と高分子量ファージゲノムDNA抽出法、および菌体からのゲノムDNA抽出法について検討し、基本的なプロトコールを作成した。菌体からの高分子量ゲノムDNA抽出に関しては、機械的な細胞破砕法によってもある程度のサイズのゲノムDNAが抽出できることを確認できた。 (2)Nanoporeを用いた1分子シーケンシングに関しては、大腸菌を含む数種類のゲノム(ミトコンドリアと葉緑体を含む)を用いて、新しいバージョンのNanoporeシステムでのサンプル調整法に関する検討、シーケンスリードの評価、アッセンブル法とイルミナリードによるpolishingの効果の評価を行い、解析パイプラインを確立した。これらの検討とデータ解析から、基本的には、50x以上のデータが取得できれば、特殊な配列を除くと、99%以上の精度の高精度配列を取得することができることを確認できた。 (3)10X Genomicsを用いたLinked Read Sequencingに関しては、業者委託によってイルミナシ-ケンサーでの解析使用できるライブラリーが得られることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の大きな目標は、次年度の大規模解析の基盤となる解析手法の確立であった。当初は、1検体の人由来糞便サンプルを対象としてディープな配列解析を行う計画であったが、Nanoporeを用いたシーケンシング法の評価、サンプル調整法などの至適化が必要となった。また、福岡県内のコホート研究からサンプルを収集することになっていたが、その計画立案と倫理審査に時間を要し、ヒト由来サンプルの使用ができなかった。さらに、10X Genomicsの学内導入が中止となり、外部の業者にライブラリー作成を依頼する必要が生じた。そのため、今年度は、(1)ウシ糞便を用いた、ファージ誘発条件、高分子量ファージゲノムDNA抽出法、菌体からのゲノムDNA抽出法の検討による基本的なプロトコールの作成、(2)大腸菌などのゲノムを用いた、新しいバージョンのNanoporeシステムでのサンプル調整法に関する検討、シーケンスリードの評価、アッセンブル法とイルミナリードによるpolishingの効果の評価と、Nanoporeによる解析パイプラインの確立、(3)業者委託による10X Genomicsを用いたLinked Read Sequencing用ライブラリー作成の評価にとどまった。10X Genomicsの学内導入中止やNanoporeシステムのバージョンアップなどが想定できなかったことが原因ではあるが、本年度に取得あるいは確立した解析パイプラインは、次年度以降の大規模解析の基盤となる。以上のことから進捗状況としては、順調とは言えず、やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
技術的な問題はクリアーでき、コホート研究からサンプル収集についても目処が立ったため、基本的には、当初の計画に従って研究を進める。ただし、10X Genomicsの学内導入中止とNanoporeシーケンシングの精度が向上したことが確認できたため、10X Genomicsによる解析を中止し、Nanoporeのデータ量を増やすことで対応する。具体的には、まず、1検体の糞便サンプルを対象として、(1)ファージゲノムのNanoporeを用いたシーケンシングとイルミナリードのマッピングによる各ファージゲノムの全長をカバーする高精度配列の取得、(2)糞便サンプルのメタゲノム解析による各ファージの染色体挿入部位の決定と挿入部位の周辺の配列からの宿主菌種の同定、(3)解析に使用するリード量を様々に変えたシミュレーションによる必要データ量の決定を行う。ついで、10検体の糞便サンプルを対象とした、(1)各検体からファージゲノム情報とメタゲノム情報を取得、(2)全検体から得られたファージゲノム配列の比較解析とメタゲノム配列との統合解析により、1)全検体に存在するファージのカタログ化と類似ファージのグループ化、2)各ファージの各検体における存在比とその検体間での差異の解析、3)ファージ間での組換え頻度と組換え様式の解析、4)ファージ遺伝子のカタログ化(腸内ファージのpangenome)、5)宿主菌の同定結果に基づく菌種間でのファージを介した遺伝子伝達頻度やパターンの解析等を行うことにより、腸内に広がるReal phage worldの実態の解明を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の目標は、次年度の大規模解析の基盤となる解析手法の確立であり、当初計画では、1検体の人由来糞便サンプルを対象としてディープな配列解析を行う予定であった。しかし、Nanoporeによるシーケンシング法の評価、サンプル調整法などの至適化が必要となった。また、福岡県内のコホート研究からサンプルを収集する予定であったが、倫理審査等に時間を要し、人由来サンプルの使用ができなかった。さらに、10X Genomicsの学内導入が中止となり、外部の業者にライブラリー作成を依頼する必要が生じた。そのため、本年度の解析は、(1)ウシ糞便を用いた、ファージ誘発条件、高分子量ファージゲノムDNA抽出法、菌体からのゲノムDNA抽出法の検討による基本的なプロトコールの作成、(2)大腸菌などのゲノムを用いた、新しいバージョンのNanoporeシステムでのサンプル調整法に関する検討、シーケンスリードの評価、アッセンブル法とイルミナリードによるpolishingの効果の評価と、Nanoporeによる解析パイプラインの確立、(3)業者委託による10X Genomicsを用いたLinked Read Sequencing用ライブラリー作成の評価にとどまった。従って、本年度予定していた人由来糞便サンプル1検体の解析(Nanoporeによるファージゲノム解析とイルミナによるメタゲノム解析)を次年度に行う必要が生じた。
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