2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19574
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
木梨 達雄 関西医科大学, 医学部, 教授 (30202039)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 免疫学 / インテグリン / 一分子計測 / 免疫シナプス / ケモタキシス |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパ球は非造血系細胞と比較し、接着構造や移動速度において特殊な細胞であり、インテグリンはその基盤となる接着分子である。本計画では申請者らが開発したLFA-1/ICAM-1の結合動態を接着の場で一分子レベルで測定する技術を発展させ、Rap1シグナル分子群talin、 kindlin-3を同時可視化することによってLFA-1/ICAM-1の結合分布が細胞移動の前後軸、免疫シナプスの中心と辺縁でどのような制御をうけるのか明らかにする。そして接着・移動の可塑性や安定性を調節するLFA-1/ICAM-1結合のしくみ、動力学的校正モデルの検討および各過程の操作による生体内動態・抗原探索の最適化を目指す。H29年度はLFA-1、 インテグリン結合分子(talin1、 kindlin-3)の一分子計測する実験系を樹立し、inside-out/out-side in シグナル過程における結合キネティックスを測定した。ヒトLFA-1発現リンパ球細胞株を用い、未刺激、インテグリン活性化刺激のみ、ICAM-1接着時におけるtalin1、 kindlin-3の結合解離速度を一分子イメージング解析によって解析した。その結果、ICAM-1結合解離速度の範囲で複数の状態をとりうること、最も遅い解離速度はICAM-1の高親和性結合とほぼ一致していることが明らかになった。高親和性ICAM-1結合を誘導することによってもっとも遅い解離速度をもつtalin1、 kindlin-3が増加した。また、2波長同時計測装置をTIRF顕微鏡に設置し、一分子レベルの解像度が得られた。2軌跡の会合キネティックスのプログラムを作成し、測定および解析系を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
talin1/kindlin-3の一分子測定系の樹立;リンパ球細胞株を用いてtalin1またはkindlin-3欠損株を作製し、LFA-1/ICAM-1接着が消失し、halotagを付加したtalin1、 kindlin-3を発現させることによって回復した。一分子結合キネティックス解析からICAM-1への高親和性結合はtalin1、 kindlin-3に依存していた。talin-1、 kindlin-3の膜滞在時間はインテグリン活性化刺激(ケモカイン、PMA等)によって増加し、膜局在によって拡散係数の低下が観察された。膜滞在時間のfitting curveからtalin1は異なる解離速度をもつ複数の結合が存在し、ほぼ3つの解離速度の反応に区分可能であった。この解離速度はICAM-1結合の解離速度とほぼ一致し、LFA-1のhigh affinity conformationによって解離速度の低い成分が増加した。これらのことからtalinの結合キネティックスがICAM-1結合のkineticsを制御していることが強く示唆された。kindlin-3は未刺激状態で一定の割合、細胞膜に結合しており、インテグリン活性化刺激によって膜への移行が増加し、拡散係数が低下した。解離速度はtalinと似ており、3つの成分に区分可能であった。2波長同時計測装置(W-View Gemini、 浜松ホトニクス)をTIRF顕微鏡に設置し、一分子レベルの解像度が得られることを確認した。また、2軌跡の会合キネティックスのプログラムを作成し、測定および解析系を樹立した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、Rap1活性化によって誘導されるtalin1、 kindlin-3とβ2インテグリンとの結合動態が明らかになってきた。次にRap1活性化のキネティックスを測定することによってRap1のON/OFFによってtalin、 kindlin-3の結合がどのように変化するか明らかにする。効率よく測定するため、Rap1a/Rap1b遺伝子欠損細胞株を作製し、halotag-Rap1を導入する。可視化した当該分子を導入することが膜局在と活性化の関係を調べ、タグを付加したRap1の膜移行キネティックスを測定する。Rap1の欠損、恒常活性化型変異体導入、Rap1の交換因子(RapGEF1、 RasGRP等)、不活化因子(Sipa1、Rasa3)の関与をknockout/knock-downし、Rap1活性化の持続時間とtalin1、 kindlin-3結合との相関関係を調べる。また、SNAPタグを付加したβ2インテグリンを作成し、talin1、 kindlin-3との相互作用を同時に可視化して2波長測定する。β2細胞内領域のtalin結合部位 (proximal NPXF、 W747)、kindlin-3結合部位(distal NPXF、 TTT)変異体を導入し、talin1とkindlin-3の結合領域の重要性を調べる。また、talin1、 kindlin-3のFERMドメインの変異体、F-actin結合部位変異を導入し、その効果を調べる。これらの測定からinside-out刺激から誘導される結合キネティックスがICAM-1結合によってどのように変化するか明らかにする。特にケモカイン刺激によるICAM-1上での細胞移動に伴い、Rap1膜移行、talin1、kindl-3の結合キネティックスを相互相関を明らかにする。
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Research Products
(4 results)