2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K19582
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 一男 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (00436643)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 骨代謝 / がん / 骨転移 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスのがん骨転移モデルを用いて、骨転移巣で形成される腫瘍-骨髄境界領域の構成因子及び制御機構を明らかにし、抗腫瘍免疫応答に対する病理学的意義を解明することを目指す。 1.がん細胞-骨髄細胞間の境界領域を構成する細胞の解析 C57BL/6 backgroundのメラノーマ細胞株B16F10の左心室投与による骨転移モデルを使用した。転移マウスの大腿骨の病理組織標本を作製し、T、B、NK、NKT、単球、各種マクロファージ、樹状細胞等の免疫細胞、及び骨芽細胞、破骨細胞、血管内皮細胞、CXCL12陽性細胞、間葉系幹細胞等の骨髄構成細胞に対する特異的抗体を用いて免疫染色を実施し、骨転移によりもたらされる骨髄構成細胞の変化を明らかにした。特にがん細胞-骨髄境界領域に着目し、境界領域を構成する細胞集団を検討した 2.境界領域構成細胞の遺伝子発現変動解析と、骨転移巣の分泌因子の網羅解析 骨転移巣における腫瘍、骨髄構成細胞をCell sorterにより単離してRNAを抽出し、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子発現解析を実施した。さらにB16F10細胞上清もしくは骨髄液中の分泌タンパク質を四重極飛行時間型質量分析装置を用いて、網羅的同定及び検体間の比較定量解析を行った。以上のトランスクリプトーム解析、プロテオーム解析の結果から、骨転移によって誘導される遺伝子・タンパク質発現変動を検討し、境界構成細胞に関連性の高い因子群を抽出した。これらはがん細胞-骨髄境界領域の形成に関与する候補因子と想定し、今後その病理学的意義の解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、レーザーマイクロダイセクションを用いて採取したがん細胞-骨髄境界領域の組織片からRNAを抽出し、遺伝子発現解析を実施する予定であった。しかしながらRNA-seq解析に適応できる程の高純度RNAを組織切片から精製することに限界があったため、Cell sorterを用いて骨髄と腫瘍の2集団に大きく分けてRNAを抽出しRNA-seq解析を実施した。一方プロテオーム解析は計画通りに実施でき、上記のRNA-seq解析結果と統合することで、骨転移によって生じる骨髄内遺伝子発現変動データを網羅的に収集することできた。以上より、総じてほぼ計画通りに研究が順調に進めることができたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実験結果から、がん細胞-骨髄細胞境界領域の構成細胞がヘテロな集団である可能性が高いと考察している。従って、より詳細に遺伝子発現変動を明らかにするため、single-cell RNA-seq解析も計画に含めて進めていく予定である。境界領域構成細胞の特徴的遺伝子、及び境界領域形成を誘導する分泌因子の候補を絞り、CRISPR/Cas9システムにより遺伝子欠損マウスを作製する予定である。最終的にB16F10骨転移モデルを実施し、病態進行度ならびに免疫応答、炎症反応の免疫学的表現型を検討することで、がん細胞-骨髄境界領域の抗腫瘍免疫応答への関与を検討する。
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Remarks |
日本骨代謝学会 2017年度研究奨励賞 受賞
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Research Products
(29 results)