2018 Fiscal Year Annual Research Report
Crosstalk between genomic abnormality and transcription activity for acquisition of stem cell property of cancer
Project/Area Number |
17K19585
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平尾 敦 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (90343350)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト初代培養アストロサイトへの遺伝子変異の導入により人工的がんモデルの作製を通して、脳腫瘍(グリオーマ)の発生過程において、いかに幹細胞性・未分化性が獲得されるのか、その分子基盤の包括的な理解を目標とした。ゲノム編集技術を用いて、ヒトグリオーマで認められる主要遺伝子変異(CDKN2A、PTEN、NF1、TP53)を初代培養アストロサイトに導入しても、不死化や増殖能の亢進が観察されるものの、免疫不全マウスの頭蓋内への移植による顕著な腫瘍形成能は認められない。そこで、幹細胞性獲得に重要な転写因子の探索を実施した。文献的には、Olig2をはじめとした4つの転写因子が幹細胞性の獲得に十分であることが報告されている。そこで、これらの4因子によって、幹細胞性が獲得できるかどうか検討した。これらの4因子は、脳腫瘍患者由来細胞を血清入り付着培養で分化させると顕著に発現低下が認められた。また、スフェロイド形成能を喪失した分化腫瘍細胞に4因子を再導入すると、スフェロイド形成能を再び獲得するなど、幹細胞の機能獲得に重要であることを検証できた。そこで、これらの4因子を、不死化アストロサイト細胞に導入したが、現時点では十分な幹細胞獲得効果は観察できていない。このことから、不死化アストロサイトでは、遺伝子異常が十分ではない、あるいはエピジェネティックな状態が腫瘍とは異なるのではないかと考えられた。本研究は、がんの幹細胞特性の獲得には多くの因子の異常が複雑に関連していることを示すものであり、今後、更なる因子の同定に有用な知見となった。この研究を推進することで、未分化性獲得に必須のシグナルや治療標的を特定することにつながると期待された。
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Research Products
(8 results)