2017 Fiscal Year Research-status Report
ロングリードシーケンスによるフェージング解析に基づく複数遺伝子変異の役割の解明
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17K19592
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
片岡 圭亮 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90631383)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / ゲノム / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 10X Genomicsによる合成的ロングリードシーケンス技術の変異解析への応用 10X Genomicsの合成的ロングリードシーケンス技術では、ハプロタイプレベルで長い配列(10 ~100 kb)を決定(=フェージング)することができる。本研究では、①マイクロ流路システムを介して個々の長鎖DNA分子をそれぞれ単一のバーコード付きアダプターを含んだゲルビーズ(GEM)に分配する、②各GEMに分配された1分子の長鎖DNAを利用して、バーコード付きアダプターが付加されたDNAフラグメントを作製する、③このDNAフラグメントを用いて、通常のショートリード・シーケンシング用のライブラリー作製と同様の処理を行い、シーケンシング反応を実施する、④付属ソフトウェアにより、得られたショートリードがそれぞれどのGEMに由来するかを判別することにより、合成的にロングリードを得る、というステップにより変異解析を行う手順を確立した。さらに、H1975肺がん細胞株(EGFR遺伝子に活性型変異であるL858Rおよび治療抵抗性に関連する変異であるT790Mを同じアレル(cis)に持つ)を用いて、同方法にてフェージング可能であるか検証した。 2. ATLで認められる複数の異なるPLCG1変異のフェージング解析 次に、ATL症例で認められる複数の異なるPLCG1変異のフェージング解析を行い、PLCG1変異が cis(同じアレル)あるいはtrans(異なるアレル)のどちらで存在するかを決定した。本解析の対象としては、申請者のこれまでの遺伝子解析により、このような複数のPLCG1遺伝子変異が存在していることを確認済みのATL症例のDNA検体を用いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定の10X Genomicsによる合成的ロングリードシーケンス技術の変異解析への応用、および、ATL患者検体の解析を実施することが出来た。そのため、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に引き続き、1. 10X Genomicsによる合成的ロングリードシーケンス技術の変異解析への応用、および、2. ATLで認められる複数の異なるPLCG1変異のフェージング解析、を実施する。 3. 異なる複数のPLCG1変異がもたらす機能的変化の検証 上記の解析で異なるPLCG1変異がcisに生じていた場合は、複数の変異を同時に持つPLCG1変異体を作成し、レンチウイルスを用いてドキシサイクリン誘導性のJ.gamma1(PLCG1欠損細胞株)安定細胞株を作成する。逆に、transに生じていた場合は、異なるPLCG1変異体をそれぞれ同時にJ.gamma1細胞株に導入し、同様に安定細胞株を作成する。これらの細胞株と、1種類のPLCG1変異体を導入した細胞株を比較することにより、異なる複数のPLCG1変異がもたらす影響を検証する。具体的には、細胞増殖やアポトーシスなどの表現型に加えて、PLC-γ1リン酸化、IP3・DAGおよび細胞内Caの量、下流シグナル伝達分子のリン酸化状態およびプロモーター活性などのシグナル伝達状態を評価する。同時にCD3/CD28刺激の有無による違いも検討する。 これらの結果、ATLの発症・進展において、異なる複数のPLCG1変異がもたらす機能的変化が明らかとなるのみならず、「同一遺伝子における複数の活性型変異の獲得」という現象の意義が明らかとなる。
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Causes of Carryover |
今年度は、当初の予定通り、経費を使用できた。翌年度分の使用計画に変更はない。
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