2018 Fiscal Year Research-status Report
Cancer-fusion cellによるがん細胞の新たな進化機構
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17K19594
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00596174)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞融合 / 細胞肥大化 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がん進展を促す細胞の出現(がん細胞の進化)には腫瘍内に存在する異なるがん原性細胞の不均一性が重要であると考えられている。このような腫瘍内不均一性は、多段階的な遺伝子変異(がん遺伝子・がん抑制遺伝子)の蓄積や、がん幹細胞の自己複製・多分化能によって生じることが示唆されている。すなわち、がん細胞の進化は突然変異や幹細胞性質といったゲノムレベルの変化に起因しているといえるが、ヘテロな細胞集団が不均一に存在しているという事実は、これらの細胞が組織内で空間的に近接していることを示しており、腫瘍内部では異なる細胞同士が互いに相互作用しがん進展を促していると考えられる。そこで本研究では、異なる細胞集団同士の相互作用を単一細胞レベルで解析し、細胞間のコミュニケーションによるがん制御メカニズムを明らかにすることを目的とした。 異なるがん遺伝子(RasとSrc)をそれぞれ活性化した哺乳類上皮細胞を共培養して共存させると、互いに相互作用し合い細胞融合することを見出した。この細胞融合現象が腫瘍内不均一性が増幅する要因として考えられたことから、細胞融合メカニズムを解析した。タイムラプス観察から細胞融合の開始には、Ras活性化細胞の肥大化現象が起こることを見出した。そこで、この細胞の肥大化を起こすトリガーを探索した。その結果、Src活性化細胞が分泌する細胞外因子をメタボローム解析によって探索したところ、グルタミン酸が過剰に分泌されていることを見出した。実際にグルタミン酸を培養中の腫瘍細胞に添加すると肥大化が生じたことから、グルタミン酸が細胞の肥大化に重要であることが分かった。一方でSrc活性化細胞内のメタボローム解析を実施したところ、グルタミン酸の蓄積は認められなかった。このことから、Src活性化細胞はグルタミン酸と積極的に放出していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Src活性化細胞によるRas活性化細胞の肥大化メカニズムを誘発する細胞外因子を同定したものの、Ras活性化細胞内の受容体の同定解析が遅れている。その理由はRas活性化細胞単独でもサイズの大きい細胞が一定の割合で存在するため、Ras活性化細胞が分泌するグルタミン酸についても解析する必要があるため当初の研究計画予定より若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSrc活性化細胞が分泌する細胞外グルタミン酸がどのようにRas活性化細胞を肥大化させるかを細胞生物学的手法や生化学的手法により解明していくと共に、Ras活性化細胞側の受容体の同定や肥大化したRas活性化細胞がもつ細胞機能と細胞融合メカニズムを明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
メタボローム解析やスクリーニングついては、共同研究として実施することが可能になったため、最終年度に予定していた肥大化Ras活性化細胞の機能解析に使用する。
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Research Products
(5 results)