2017 Fiscal Year Research-status Report
Clonal architecture of myeloid malignancies as revealed by single-cell RNA sequencing.
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17K19595
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 誠司 京都大学, 医学研究科, 教授 (60292900)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / 白血病 / クローン進展 / 単一細胞解析 / 腫瘍内多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)をはじめとした造血器腫瘍は難治性であり、いったん治療に反応してもその多くは再発する。治療開発の大きな障害の一つとして、腫瘍の不均一性があげられる。腫瘍は様々な遺伝子異常を有する複数の細胞集団から成り立っており、それぞれの細胞集団を形成する細胞は共通の遺伝子異常パターンを示し、単一の幹細胞から分化・増殖したクローンと考えられる。これらのクローンは時間経過とともにさらなる遺伝子異常を獲得していき、悪性度の高い、治療抵抗性クローンが残存・増殖し、腫瘍全体として治療抵抗性となっていく。この難治性のクローンの進展を標的とすることが可能であれば、造血器腫瘍に対する治療における格段の進展が期待されるが、そのためには、まずクローンの詳細な構造と、進展様式を知る必要がある。 通常造血器腫瘍では数個の重要な遺伝子変異(ドライバー変異)を有している症例が多いが、それらの変異の種類と組み合わせはランダムに認められるわけではなく、共存しやすい組み合わせが知られている。そのため、先行する変異を有する細胞では、引き続き引き起こされる変異が起こりやすい状況にあると考えられ、その状況を知ることはクローン進展機構の仕組みを知る手がかりになると考えられる。しかし、現状の技術では遺伝子変異を元に細胞を分離・純化することは不可能である。本研究では遺伝子異常を各細胞分画の単一細胞レベルで解析する手法により、クローン構造の詳細と、各クローンに特徴的な遺伝子発現プロファイルを明らかにする。本年度は系の検証と改良を主に行い、細胞株での検証では、遺伝子発現の高いドライバー変異は高精度に同定可能であった。しかし発現の低い遺伝子での同定率が不足していたため、現在改良を行っている。同時に造血器腫瘍検体のシーケンスと解析、生細胞の凍結保存を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は系の検証と改良に注力した。当初予定していたドロップシーケンスの改良法では遺伝子変異部の増幅・同定効率が悪く、系の大幅な変更が必要であった。新たな方法ではマイクロビーズを用いないが、基本的なコンセプトである、細胞バーコードおよび分子バーコード付きのオリゴdTプライマーでmRNAをキャプチャーして遺伝子発現プロファイルを測定することに変化はない。変異部分はバーコード近接化メイトペアライブラリの作製は中止し、変異部分をバーコード付きプライマーで増幅することとした。プライマーの最適化により、細胞株での検証では、高感度にheterozygous変異の同定に成功し、当初の目的としていた進捗を得た。 同時に実際の症例で解析を行ったところ、遺伝子発現の低い遺伝子の同定で満足いく結果が得られなかった。そこで、変異部位の再増幅などの改良を重ね、改善傾向にある。 また、症例の蓄積と全骨髄細胞での遺伝子変異のスクリーニングおよび生細胞の凍結保存は前倒しで行っており、順調に推移している。 このように、当初の計画以上に進展している領域もあるが、解析手法の変更・改善が必要になった領域もある。全体としては概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の症例での解析に注力する。 系の改善を行いながら、凍結保存してある白血病や骨髄異形性症候群の細胞を用いる。細胞分画が異なる場合は遺伝子発現パターンが大きく異なるため、造血幹細胞分画や、前駆細胞分画などをFACSにてソートしてから、単一細胞解析を行う。予め骨髄細胞全体で、白血病で高頻度に見られる遺伝子変異に対するターゲットキャプチャーシーケンスを行い、変異の種類と頻度を同定する。ドライバー変異に対するプライマーセットを設計し、細胞を解凍し解析を行う。特に、本方法でしか解析できないような、変異頻度の少ないサブクローンの解析を行う。 本年度に既に症例の解析の問題点が明らかになり、手法の改良を進めているため、引き続きその改良を併せて行いながら症例の解析を進める。変異を有する細胞と有しない細胞の遺伝子発現を比較し、ドライバー変異を有する細胞に特徴的な遺伝子発現変化を同定し、ソート可能な表面抗原や、介入可能な治療標的の同定をおこなう。
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Research Products
(3 results)