2017 Fiscal Year Research-status Report
A novel oncolytic virotherapy for paclitaxel resistant ovarian cancer
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17K19597
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中村 貴史 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432911)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / バイオマーカー / ウイルス療法 / バイオテクノロジー / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床像を反映した卵巣がんの担がんモデルマウスを構築すべく、ヌードマウスに対し、in vivoイメージング用にRenilla Luciferase (Rluc)を導入したパクリタクセル(PTx)感受性Low細胞、又はPTx耐性KFtx細胞を腹腔内投与した。Rlucの基質であるセレンテラジンを腹腔内投与することによって、マウス体内での腫瘍の生着をin vivoイメージングシステムで非侵襲的に確認した。さらに、腫瘍におけるUCA1の発現を比較解析した結果、KFtx細胞由来の腫瘍におけるUCA1の発現は高く、Low細胞由来の腫瘍では低かった。 この腹膜播種モデルマウスにPTxを投与し7日後に腫瘍をRlucイメージングした結果、Low細胞由来の腫瘍は95%以上消失したのに対し、KFTx細胞由来の腫瘍は残存していた。次に、この残存腫瘍に対する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによる治療を試みた。このウイルスはFirefly Luciferase (Fluc)を感染細胞内で発現するため、その基質であるルシフェリンを腹腔内投与することによって、マウス体内でのウイルス分布をin vivoイメージングシステムで非侵襲的に可視化できる。その結果、ウイルス投与2日後のウイルスイメージングでは、腹膜播種した残存KFtx腫瘍において高いウイルス増殖が観察された。そしてウイルス投与9日後の腫瘍イメージングでは、コントロールのPBS投与群において残存腫瘍の再増殖が観察されたのに対し、ウイルス投与群ではPTx治療前の腫瘍の98%以上が消失していた。さらに、ウイルス投与10日後のウイルスイメージングでは、この腫瘍の消失に伴って、ウイルス増殖も消失していた。 以上より、担がんモデルマウスにおいてUCA1の発現亢進が腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの増殖・伝播(腫瘍溶解性)を増強することを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画において提案した卵巣癌細胞の腹膜播種モデルマウスにおけるUCA1の発現とMDRVVの抗腫瘍効果は計画通り実施し完了した。また、もう一方の課題である臨床検体モデルにおけるUCA1の有用性の検証も順調に進展しており、卵巣癌患者検体より採取した腫瘍の初代細胞培養において、UCA1の発現が亢進している腫瘍細胞では、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの増殖・伝播が増強されることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はUCA1とワクシニアウイルスとの相互作用の解明、およびUCA1がバイオマーカーになり得るがん種やUCA1以外の他の新規バイオマーカーの同定と解析を実施する予定である。 前者は、Low細胞とLow-UCA1細胞、さらに腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを感染させたLow細胞とLow-UCA1細胞を加え、4者間でのマイクロアレイ解析を実施する。最終的に統計解析による遺伝子の抽出およびクラスタ解析による分類、それらの遺伝子のパスウェイ解析による生物学的な意味づけを行い、UCA1がワクシニアウイルスの増殖・伝播を増強する分子メカニズムを解明する。 後者は、UCA1が高発現している卵巣癌以外の肺癌、大腸癌や胃癌においてもUCA1とワクシニアウイルスの増殖・伝播との関係・相互作用を解析する。まずは卵巣癌と同様の方法によって、各ヒト癌細胞株におけるMDRVVの増殖とUCA1の発現の相関をみる。正の相関関係が確認できた場合は、卵巣癌と同様の方法により、臨床検体モデルにおけるUCA1の有用性を検証する。一方、これまで卵巣癌細胞を用いたマイクロアレイ解析の結果、UCA1以外にも、多様な遺伝子の発現変動が見られている。UCA1と同様の方法により、それらの変動遺伝子を発現、もしくはノックアウトすることによって、各遺伝子がウイルス増殖・伝播に重要な役割を果たすか否かを判定する。
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Causes of Carryover |
本年度は、卵巣癌患者の臨床検体を用いて組織片培養、初代細胞培養、及びスフェア培養の異なる培養系におけるUCA1の有用性の検証が含まれていた。初代細胞培養においては解析を実施したが、その他の組織片培養やスフェア培養に関しては、その培養系を構築中であり、本研究項目を継続して実施するために次年度使用額が生じた。
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