2017 Fiscal Year Research-status Report
Novel role of dipeptide species as an onco-nututrient to maintain cancer stem cells
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17K19599
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
仲 一仁 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (70372688)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | ジペプチド / がん幹細胞 / 抗がん剤抵抗性 / オンコ ニュートリエント / メタボローム / 再発治療 / トランスポータ |
Outline of Annual Research Achievements |
がん幹細胞は、大量のがん細胞を産み出す能力と抗がん剤治療に対する抵抗性を併せ持つ細胞であり、抗がん剤治療を逃れたがん幹細胞は再発を引き起す原因となる。すなわち、がんの再発を克服するには、がん幹細胞の生存維持メカニズムを解明し、このメカニズムを標的とする治療法を開発することが重要となる。研究代表者、慢性骨髄性白血病(CML)のマウスモデルを用いてCML幹細胞に特異的な栄養素・代謝産物のメタボローム解析を行い、ジペプチド種を蓄積していることを発見した (Naka et al., Nat Commun 2015)。ジペプチド種は二種類のアミノ酸が結合した代謝産物であり、理論的には400 (20 x 20)種のジペプチドが存在するが、がん幹細胞の未分化性や抗がん剤抵抗性を制御するオンコニュートリエントとしての機能を有するジペプチドは明らかでない。 本研究では、ジペプチドの吸収を行なうことができないジペプチドトランスポーターSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスを用いて、生体内でのCML幹細胞の自己複製能や抗がん剤抵抗性を制御するジペプチドの役割を明らかにする。さらに、上皮性腫瘍のがん幹細胞におけるメタボローム解析を行い、ジペプチドによるがん再発制御メカニズムの普遍性を検証する。 平成29年度、米国ミシガン大学よりジペプチドトランスポーターSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスの供与を受けた。このSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスからCML幹細胞の起源である正常造血幹細胞を純化した。この細胞にヒトCMLの原因遺伝子BCR-ABL1を導入し、放射線照射したレシピエントマウスに移植を行なって、CMLマウスモデルを構築することに成功した。 一方、予備実験として、正常胃腺幹細胞由来のオルガノイドを用いたメタボローム解析を行ない、本解析に必要な細胞条件の検証を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度、当初の計画通り、米国ミシガン大学よりジペプチドトランスポーターSlc15A2遺伝子のノックアウトマウスの供与を受け、CMLのマウスモデルを構築した。野生型マウス、並びに同腹仔のSlc15A2ノックアウトマウスの骨髄単核細胞を取得し、抗CD4 (L3T4)、抗CD8 (53-6.7)、抗B220 (RA3-6B2)、抗TER119 (Ly-76)、抗Gr-1 (RB6-8C5)、抗Mac1 (M1/70)、抗Sca-1 (E13-161.7)、並びに抗c-Kit (2B8)抗体を用いた染色を行った。これらのマウス骨髄単核細胞から、セルソーター (FACS Aria III, BD社製) を用いて、マウス造血幹細胞を含む分化マーカー(CD4, CD8, B220, TER119, Gr-1, Mac1)陰性・c-Kit陽性・Sca-1陽性細胞集団 (KSL細胞) を純化した。このKSL細胞に、レトロウイルスベクターを用いてBCR-ABL1遺伝子を導入した(BCR-ABL1遺伝子は、染色体9番のABL1遺伝子と染色体22番のBCR遺伝子の融合によって生じるヒトCMLの原因遺伝子である)。この細胞を放射線照射したレシピエントマウス (C57BL/6) に移植を行なった。約2から3週間後、CMLの発症を確認した。 また、本研究では、上皮性腫瘍のがん幹細胞におけるジペプチド種の蓄積、及びその役割を検証する。平成29年度、予備実験として、正常胃腺幹細胞由来のオルガノイドを用いたメタボローム解析を行ない、解析に必要な細胞条件の検証を実施した。その結果、3x10^6細胞を用いることで網羅的な代謝産物のメタボローム解析が可能であることを明らにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度、上記の野生型、並びにSlc15A2欠損CMLマウスにチロシンキナーゼ阻害剤イマチニブの治療を行い、治療中止後の再発の有無について解析を行なう。 一方、テトラサイクリン投与によってCMLの発症を制御できるSlc15A2欠損テトラサイクリン誘導型CMLマウスモデルを樹立する。当該マウスモデルでは、最も未分化なCML幹細胞集団と考えられているCD150+CD34-CD48-KSL細胞を純化することができる。まず、Slc15A2ノックアウトマウス、幹細胞特異的にテトラサイクリン制御性転写活性化因子(tTA)を発現するトランスジェニックマウス(Scl-tTA) 、並びにtTA によって発現制御を行うことが可能なtetO-BCR-ABL1トランスジェニックマウス(TRE-BCR-ABL1 )の交配を行なう。これらの野生型、並びにSlc15A2欠損CMLマウスにおいてCD150+CD34-CD48-KSL細胞の頻度を解析し、CML幹細胞の自己複製能の制御におけるジペプチド吸収の意義を明らかにする。さらに、当該マウスモデルにイマチニブの投与を行い、残存するイマチニブ抵抗性CML幹細胞の解析を行なう。 次いで、上記のSlc15A2欠損CML幹細胞におけるメタボローム解析を行い、Slc15A2欠損CML幹細胞で低下しているジペプチドの解析を行う。以上の解析により、CML幹細胞の未分化性の維持やチロシンキナーゼ抵抗性の制御に関わるジペプチドの検討を行う。 また、ヒト胃がん患者由来の胃がん幹細胞、並びに正常胃腺幹細胞のオルガノイドを用いてメタボローム解析を行ない、胃がん幹細胞におけるジペプチド蓄積を解析する。 以上の検討により、マウスCML幹細胞とヒト上皮性がん幹細胞との間での栄養・代謝制御の共通性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
ジペプチドトランスポーターSlc15A2欠損マウスの導入が予定より遅れ、Slc15A2欠損CMLマウスモデルの樹立が2018年6月へと遅延した。そのため、本研究で予定しているSlc15A2欠損CML幹細胞の純化、メタボローム解析、遺伝子発現解析を平成30年度に実施する。
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Research Products
(14 results)