2017 Fiscal Year Research-status Report
肝内胆管がん発生母地となる肝細胞性状変化の多階層オミクス解析
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17K19603
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30415195)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 肝内胆管がん / 肝細胞 / 分化 / トランスオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
肝内胆管がんは発症原因が不明で予後不良な悪性腫瘍であり、その発症率や死亡率が近年増加傾向にあることから、予防や診断、治療に向けた肝内胆管がんの発症機構の解明は急務といえる。肝内胆管がんは胆管上皮細胞から発生する悪性腫瘍と定義されるが、実際は肝細胞の運命転換によっても生じ、その性状変化は肝障害誘導から極めて早期に開始される。そのため、肝内胆管がんの発症機構を理解するためには、遺伝子変異に至るかなり前に肝細胞に生じる性状変化を解明する必要がある。そこで本研究では、マウスの肝内胆管がん発症モデルを用いて、肝障害誘導直後から肝細胞に生じる性状変化として「エピジェネティック変化(エピゲノミクス)」、「遺伝子発現変化(トランスクリプトミクス)」、「代謝リプログラミング(メタボロミクス)」に焦点をあてた解析を行い、得られる多階層オミクスデータの統合的解析から肝内胆管がん発症機構のシステム的理解を目指す。これまでに行った研究では、肝内胆管がんモデルマウスから得た肝細胞のエピゲノム状態について、肝細胞の性状変化に特有のヒストン修飾変化、並びに修飾を受ける遺伝子領域を同定した。また、同様に取得した肝細胞について、肝障害誘導によって生じる遺伝子発現変化も明らかにした。本研究では、肝内胆管がんの発症機構をシステムとして理解することが可能となり、肝内胆管がんの早期診断や治療法の開発につながる情報の取得が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに行った研究では、肝内胆管がんモデルマウスから得た肝細胞を用いて肝障害誘導直後から肝細胞に生じる性状変化のエピゲノム解析やトランスクリプトーム解析が進んでいることから、肝内胆管がん発症機構のシステム的理解に向けておおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、肝内胆管がんモデルマウスから得た肝細胞の細胞内代謝物について大規模かつ網羅的な測定を行う。そして、得られる多階層オミクスデータをつなぎ合わせたトランスオミクス解析を実施し、肝内胆管がんの発生母地となる肝細胞の性状変化に関わる遺伝子発現変動のエピゲノム制御と代謝特性の変化をつなぐ分子機構を解明する。
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Causes of Carryover |
研究の順調な進行にともなう研究の拡大を考慮し、研究費をより効果的に使用するために次年度での使用を決定した。
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