2017 Fiscal Year Research-status Report
自己ゲノムDNA断片化と分泌の分子メカニズム解明への挑戦
Project/Area Number |
17K19618
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
高橋 暁子 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化プロジェクト, プロジェクトリーダー (60380052)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 細胞老化 / ゲノムDNA / cfDNA / 自然免疫応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は細胞外遊離DNA断片(cell free DNA; cfDNA)が産生される分子機構を明らかにするために、まずヒト正常線維芽細胞株(TIG-3, Hs68, IMR90)、ヒト正常上皮細胞株(HRPE, NHEK)、マウス正常線維芽細胞株(MEF)、マウス肝星細胞(HSC)に継代培養もしくは発がんストレスによる細胞老化を誘導し、細胞質にゲノムDNA断片の蓄積がおこるかどうかを検討した。その結果、細胞老化の誘導に伴って、細胞質分画に存在するゲノムDNAの量が顕著に増加することが明らかとなった。 さらに出芽酵母や培養細胞を用いた予備実験の結果から、生細胞からのcfDNAの産生にはDNA複製経路、DNA修復経路、転写経路の関与が疑われたので、これらの経路に重要な因子の遺伝子破壊株を作成し解析を行った。遺伝子欠損株を作成すると致死の遺伝子に関しては、植物由来のオーキシンホルモン誘導性に蛋白を分解するデグロン株を作製し、細胞質もしくは細胞外に分泌されたゲノムDNAの量を定量することで、DNA断片の生成に関与している因子を検討した。その結果、老化細胞でゲノムDNA断片の産生に関わる候補因子を同定することができたので、現在それらの因子の検証実験を行っている。さらに、cfDNAの産生と個体老化や加齢性疾患の関わりを明らかにするために、重要な因子に関してはコンディショナルノックアウトマウスの作成を開始した。 また、老化細胞で細胞質に蓄積した核酸断片の生物学的機能を解析し、それが自然免疫応答を介したSASP(Senescence-associated secretory phenotype)の誘導に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、老化細胞で細胞質に蓄積するゲノムDNA断片によって自然免疫応答が誘導され、SASPをおこすことで発がんに関わる新たな分子メカニズムを明らかにし、論文としてその成果を発表した。また、生細胞でクロマチン断片の生成に関わる因子の候補を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
私たちは、老化細胞でクロマチン断片の生成に関わる候補因子を同定することができたので、現在その因子のコンディショナルノックアウトを作成している。来年度は培養細胞を用いた解析に加えて、マウスモデルを用いてcfDNAの産生と疾患との関りを明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
初年度は主に出芽酵母や培養細胞を用いたスクリーニングと解析実験を行ってきたが、次年度はコンディショナルノックアウトを用いた個体レベルの解析に入るため、マウスの飼育や解析に研究費がかかることが予測されたため、当該助成金の一部を来年に持ち越して翌年度分と合わせて研究計画の遂行に使用することとした。
|
Research Products
(7 results)