2018 Fiscal Year Research-status Report
Organoid-based Modeling of Endometrial Carcinogenesis
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17K19624
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 部長 (30359632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸 喜明 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (30742754)
田中 尚武 千葉県がんセンター(研究所), 婦人科, 部長 (80236611)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | オルガノイド / 子宮内膜がん / 発がん / モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮体がんは子宮内膜由来の悪性腫瘍であり、組織学的に大きく2群に分類される。このうち類内膜腺癌(80%)ではPIK3CA、PTEN、ARID1A、KRAS、漿液性腺癌(20%)ではp53の変異頻度が高いことが既知だったが、遺伝子改変マウスの作成による疾患モデルの確立に関してはごく少数に留まっていた。さらに、近年のがんゲノム解析の進展により子宮体がんの遺伝子異常の全貌も明らかになってきたが(TCGA, Nature, 2013)、多数の新規変異の同定に対して当該遺伝子改変マウスの作成による子宮体がんへの関与を検証する報告は皆無であった。 このように、子宮体がん研究の進展にとって疾患モデル作成が律速段階となっており、結果として子宮体がんの発症機構の解明や治療の標的分子の同定のためのリソースが不足している状況が継続していた。一方、申請者はマウス正常オルガノイドへの複数遺伝子導入により、多段階発がん過程の本質的な部分が迅速に再現可能であることを複数の臓器で報告しており(Onuma et al, PNAS, 2013)、「in vitro発がん再構成系」と命名した。 そこで、同様の手法を子宮内膜に適用して様々な遺伝子型の子宮体がんを細胞レベルで再現することを着想し、以下の3点を目的として設定することとした。(1)オルガノイドを用いた新規子宮体がんモデルの系統的作成、(2)同モデルを用いた子宮体がん発症機構の解明、(3)同モデルを用いた治療標的の探索・治療薬の評価。複数の遺伝子方について腫瘍形成を達成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、Ptenノックダウン単独では腫瘍形成が見られないこと、コントロールベクターの導入によりオルガノイドがおそらく細胞老化を介して増殖停止することを確認している。Kras変異との組み合わせではCdkn2aのノックダウンまたはp53のノックアウトによりがん肉腫がほぼ全例で誘導されることを明らかにした。がん化の過程でKrasの野生型アレルが高頻度で欠失すること、Kras遺伝子の組み替えが生じていないがん細胞が存在することなどを新たに見出したが、これらの形質はいずれも他の臓器の発がんモデルでは観察されておらず、がん肉腫の発症に何らかの関与をしていることが示唆された。 さらに、Kras変異とPtenノックダウンの組み合わせにより、長期培養オルガノイドを使用した場合のみ腺癌が誘導されることを確認しているが、興味深いことにリンパ節への転移性を同時に獲得していた。そのため、皮下腫瘍および転移巣から再びオルガノイドを樹立して再移植したところ、最終的にはヌードマウスのみならず通常のB6マウスにおいても肺転移性を獲得するにいたった。 Pik3ca変異に関してはPtenノックダウンの追加で腺癌が誘導される場合もあるが、今のところ成功率が低く、症例数を増やすと同時に使用するオルガノイドの条件について複数種類検討を行っている。 Kras依存的な発がん過程に関しては、腺癌転移モデルと癌肉腫モデルの確立に至った。ここまでの内容につき、二報の論文としてまとめ現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれらのモデルを用いて疾患の発症メカニズムの解明を進めていく。具体的にはシングルセル由来のオルガノイドを用いた解析による上皮・間葉転換のタイミングの同定や、ヌードマウス皮下腫瘍の時系列での解剖による腺癌・肉腫の比率の変化からの肉腫が発生するタイミングの同定などがあげられる。また、これまでにin vivoモデルとしてはがん肉腫が報告されていないため、子宮内膜特異的ないKras/p53二重変異マウスの作成を進めている。このことにより、オルガノイド発がんモデルの結果からin vivoでの発がん性の予測が可能か検証する初めての例となる。 一方、転移性の腫瘍に関しては皮下移植を繰り返しているが次第に転移能が高くなっているため、遺伝子導入に用いた最初のオルガノイドから肺転移病変由来オルガノイドまで数検体について遺伝子発現プロファイル解析を行い、転移能の獲得や増強に関連するシグナル経路の抽出を試みる。さらに、ゲノムコピー数解析を行いクローンとしてどの程度安定な形質をほじしているか検討を行う。特に、リンパ節および肺への転移確率がほぼ100%であり、また血管内腔への細胞クラスターの塞栓像なども見られることから、血行性・リンパ行性の転移の両方のモデルとして利用できる可能性がある。 また、子宮体癌はホルモンがその発症に関与しているため、移植するヌードマウスに関してオス・メスの違いが腫瘍の形成に影響を与えるか検討を行う。さらに、Pik3ca変異をドライバーとする腫瘍の作成に関して複数の遺伝子異常の追加を検討する。
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Causes of Carryover |
発注した消耗品が年度内に納品できなかったため残額が生じることとなった。次年度に納品されたため予定通り使用できた。
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Research Products
(9 results)