2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19639
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
阿部 高志 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (00549644)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 睡眠 / 眠気 / 覚醒度 / ヴィジランス / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
覚醒状態のゆらぎは「眠気」を特徴付ける現象である(Doran et al., 2001)。この覚醒度のゆらぎに周期性があるのかどうか,周期性があるとすると睡眠不足によってどのように変化するのかはまだ詳しく分かっていない。睡眠中に特徴的な脳波である紡錘波が0.02Hzの周期で出現するという報告がなされており(Lecci, et al., 2017),睡眠中と類似の現象が覚醒時に発生していている可能性が考えられる。本研究は睡眠不足が覚醒度のゆらぎの周期性変動に及ぼす影響を検討することを目的とした。本年度は取得済みの実験データを用いて脳波を詳細に解析した。この実験には,健常者16名(平均36.9±8.2歳,女性11名)が参加し,各参加者は自宅で8時間睡眠もしくは4時間睡眠をとった後の午前9時に実験室に来室し,20分間の精神運動ヴィジランス課題(Psychomotor Vigilance Test: PVT)を実施した。PVT実施中の脳波を記録した。アルファ帯域(4-8 Hz)脳波およびシータ帯域(8-13 Hz)脳波を覚醒度の指標とした。各部位の脳波信号に対してアルファ帯域もしくはシータ帯域のバンドパスフィルタを適用した後,信号の包絡線を求め,その包絡線に対してスペクトル解析を行った。シータ帯域脳波の包絡線については,0.03-0.2Hzの周期で増減する成分が睡眠制限によって増大することが分かった。また,アルファ帯域脳波の包絡線については,0.004-0.2Hzの周期で出現する成分が睡眠制限によって増大することが分かった。これらの成分は自発的に出現する周期性の現象であると考えられ,それが睡眠制限によって増大すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本補助事業の初年度に研究代表者の所属機関が変更になり,異動後の研究室の立ち上げに時間を要した。更に,ヒト睡眠用実験室の新設工事のために半年以上実験を実施できない期間があった。
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Strategy for Future Research Activity |
睡眠不足に伴って覚醒状態は不安定になる。この不安定性に周期性があると,将来どのタイミングで居眠りやパフォーマンスの低下が発生するのかを予測できるようになる。しかし,覚醒状態の不安定性の周期性に関してはまだ十分理解されていない。そこで,この現象の周期性変動を理解することを目指して,その特徴を明らかにするための研究を実施する。新たに新設されたヒト睡眠用実験室にて,断眠実験を実施する。光や温度・湿度などが統制された睡眠実験室にて1晩の断眠負荷を行う。対照条件として実験室で8時間の睡眠をとる条件を設ける。断眠負荷前後および8時間睡眠前後に精神運動ヴィジランス課題を負荷するとともに,同時に脳波記録を行う。通常睡眠条件と断眠条件のクロスオーバー比較デザインとする。また,長周期の変動をより安定して記録するために,睡眠前後および断眠前後に,40分間のPVTを負荷する。この検討を進めることで,覚醒度のゆらぎを理解するとともに,「眠気」に伴うヒューマンエラーや交通事故の防止に貢献する。
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Causes of Carryover |
本補助事業の初年度に研究代表者の所属機関が変更になり,異動後の研究室の立ち上げに時間を要した。更に,ヒト睡眠用実験室の新設工事のために半年以上実験を実施できない期間があった。今後,本補助事業によって実施した実験結果を論文投稿する予定であるが,当初予定していた周波数とは異なる帯域で覚醒度のゆらぎが生じることを発見した。より精緻に新規の現象を論文報告するために,この現象の再現実験が必要と判断した。
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Research Products
(4 results)