2017 Fiscal Year Research-status Report
血小板活性化受容体CLEC-2を標的とした癌手術後リンパ浮腫の予防法
Project/Area Number |
17K19649
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
井上 克枝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10324211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百澤 明 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90383679)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 術後リンパ浮腫 / 血小板 / CLEC-2 / ポドプラニン / リンパ管内皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌手術時に広範なリンパ節郭清を加えた場合、四肢にリンパ浮腫が生じることがある。リンパ浮腫が慢性化すると、線維化、象皮化へと進み、QOLを著しく阻害するばかりでなく、蜂窩織炎や管肉腫を発症することもある。我国には12万人の患者がいるが、有効な根治療法も予防法もない。 私達は血小板活性化受容体CLEC-2と、その生体内リガンドがポドプラニン(PDPN)という膜蛋白であることを同定した。CLEC-2は胎生期にリンパ管内皮が血管内皮から分離して生じる際、リンパ管内皮のPDPNと結合してリンパ管と血管の分離を促進する。CLEC-2/PDPNの結合で活性化された血小板からTGFbetaが放出され、リンパ管内皮の遊走や増殖を抑制するためと考えられる。私たちは、「術後リンパ節郭清後にリンパ管が伸長する際、血小板CLEC-2とリンパ管内皮のPDPNの結合で活性化された血小板から放出されたTGFbetaにより、伸長が阻害されて浮腫となる」との仮説を立てた。 マウスリンパ浮腫モデル(尾部環状切開法)でCLEC-2を欠損させた際の浮腫の程度を対照と比較した。抗CLEC-2抗体あるいはコントロールIgG抗体を投与して4日後のマウス(各6-7匹)に、上記環状切開を加えて、7日後、10日後の浮腫の程度を、焼灼部位より2 mm下部の最大径としてノギスにて測定した。対照として、上記の手術を加えないマウス(3匹)の尾部同部位の厚みも計測した(3.042-5.051 mm)。仮説通りCLEC-2欠損マウスで浮腫の有意な軽減(P<0.05)が認められた。しかし、別の術者では差が認められず、手技の熟達が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まだリンパ浮腫モデルの確立できていない。30 Gyの放射線を左鼠蹊部に照射後1週間で、皮膚を切開してリンパ管を結紮してリンパ浮腫を惹起するOashi らの方法を検討する予定であったが、細いリンパ管を特定して結紮する方法が困難と思われ、尾部環状切開法を選択したが、こちらも手技の安定には、かなりの熟練が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、尾部環状切開法を行っている施設を見学の上、反復して尾部環状切開法を繰り返し、熟達したうえで、CLEC-2抗体の効果を検討する。別のリンパ浮腫モデルについては、日常的に行っている施設との共同研究を検討する。
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Causes of Carryover |
2名分の旅費を申請したが、1名分を支出する必要がなくなったため。予定よりも使用マウス数が少なく、ラットモデルも検討しなかったため、実験動物の飼育委託費が少なかった。次年度は、マウス尾部リンパ浮腫モデルを用いた実験を加速するため、マウス、抗体など免疫染色用用品、抗CLEC-2抗体ハイブリドーマ培養精製用品、マウス飼育費など、消耗品を中心に使用する予定である。
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