2018 Fiscal Year Research-status Report
血小板活性化受容体CLEC-2を標的とした癌手術後リンパ浮腫の予防法
Project/Area Number |
17K19649
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
井上 克枝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10324211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百澤 明 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (90383679)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 術後リンパ浮腫 / 血小板 / CLEC-2 / ポドプラニン / リンパ管内皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌手術時に広範なリンパ節郭清を加えた場合、四肢にリンパ浮腫が生じることがある。リンパ浮腫が慢性化すると、線維化、象皮化へと進み、QOLを著しく阻害するばかりでなく、蜂窩織炎や管肉腫を発症することもある。我国には12万人の患者がいるが、有効な根治療法も予防法もない。 私達は血小板活性化受容体CLEC-2と、その生体内リガンドがポドプラニン(PDPN)という膜蛋白であることを同定した。CLEC-2は胎生期にリンパ管内皮が血管内皮から分離して生じる際、リンパ管内皮のPDPNと結合してリンパ管と血管の分離を促進する。CLEC-2/PDPNの結合で活性化された血小板からTGFbetaが放出され、リンパ管内皮の遊走や増殖を抑制するためと考えられる。私たちは、「術後リンパ節郭清後にリンパ管が伸長する際、血小板CLEC-2とリンパ管内皮のPDPNの結合で活性化された血小板から放出されたTGFbetaにより、伸長が阻害されて浮腫となる」との仮説を立てた。 昨年までに、マウスリンパ浮腫モデルとして尾部環状切開法を検討したが、再現性のあるデータが得られなかった。今年度は、後肢放射線照射およびリンパ節除去による放射線照射後肢リンパ浮腫モデルを検討したが、放射線照射による皮膚の炎症が強く、不適当であった。そこで後肢皮膚を環状切開後、鼠経・膝窩リンパ節除去し、創部にゴムバンドを縫合する後肢リンパ浮腫モデルを作製した。野生型骨髄キメラマウスと血小板特異的CLEC-2欠損骨髄キメラマウスを10匹ずつ作製し、本術式を行い、day0-14まで後肢の周径を測定した。術後3日目までの急性期の周径に差はなかったが、day 5-10でCLEC-2欠損キメラで有意に周径が減少していた。この結果は仮説に矛盾しない結果であるが、さらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンパ浮腫モデルマウスがおおむね確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、リンパ管造影を行い、リンパ管の走行の程度を野生型マウスとCLEC-2キメラマウスで比較するとともに、組織切片でリンパ管再生の程度も確認する。また、抗CLEC-2抗体やCLEC-2結合低分子化合物Co-HPなど、別の方法でCLEC-2を抑制した際にも同様の現象が生じるかを検討する。
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