2017 Fiscal Year Research-status Report
肥満、糖尿病関連遺伝子レプチンと炎症性腸疾患の関連性の検討
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17K19668
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
筋野 智久 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (40464862)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | レプチン / 腸炎 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
レプチンはホルモンの一種であり、食事摂取後に脳、筋肉、褐色脂肪細胞に働き、インスリン感受性、及び血糖の上昇抑制に役割を果たしている。近年レプチンの受容体がT細胞上にもあることが発見され、DSS、TNBS、CD45RBhigh adoptive transfer modelにて+Leprdb/+Leprdbマウスでは腸炎が誘導されにくいことが示された(B Siegmund, et al. Gastroenterology 2002. Gut 2004)。そのメカニズムとしてTh1の抑制、Treg増加という報告がなされている(Pedro MV, et al. EJI 2014)。他に、レプチンレセプターからのシグナルはSTAT3のリン酸化に重要な役割を果たしていることが明らかにされている(Reis B, et al. JI 2015)。しかし、既報では大腸の粘膜固有層についての解析しかされておらず、小腸においては解析がされていないのが現状である。 レプチン受容体シグナルと腸管内のCD4T細胞の関連性を検討する。レプチン受容体下流のシグナルはSTAT3経路、mTOR/Akt経路があり、前者はTh17誘導にも必須であることが示されている。一方で後者についてはT細胞上での役割は不明な点が多い。mTORシグナルは細胞内代謝に大きく関わるシグナルであり、mTORC1が活性化するとTh17細胞に誘導され、glycolysis dominantな呼吸を行うとされる。 細胞内代謝を制御することでCD4IEL誘導が促進する可能性があるが、細胞内代謝と小腸CD4T細胞分化の観点での報告はない。本研究でmTORシグナルを介した細胞内代謝を検討し、細胞内代謝の側面からの小腸CD4の分化誘導機構解明を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レプチンKOマウスにおいては、小腸上皮特異的CD4T細胞の分画がコントロールマウスより減少していた。興味深いことに小腸特異的CD4 T細胞においてはその前駆細胞と比較し、レプチンレセプターの発現減少と比例して、Hif1a, mtorc1, mtorc2といった発現遺伝子が減少していた。そこでまず、解糖系の小腸上皮内特異的CD4 T細胞の関与について2DG投与を行なった結果、2DG投与群においては小腸特異的CD4 T細胞の誘導不全を認めた。さらにglut1の下流を抑制するmetforminを投与した結果、met投与群においては2DGと同様に小腸特異的CD4T細胞の誘導不全を認めた。さらにhif1の関与を検討するためCD4特異的hif1ノックアウトマウスを作成した。Hif1ノックアウトマウスでも同様に小腸特異的CD4T 細胞の誘導不全を認めた。Hifの過剰発現モデルであるVhlコンディショナルKOマウスも作成したが、コントロールと有意差を認めなかった。以上より、レプチン、Hifの存在は小腸特異的CD4T細胞の分化に重要であることが判明した。次にレプチンのレセプターKOマウスでも検討を行なった。レプチンRKOマウスにおいては興味深いことに小腸特異的CD4細胞が誘導されていた。この現象はレプチンシグナルの重要性の他にレプチンレセプター以外を介してシグナルが補われることで小腸特異的CD4 T細胞の誘導が観察されること示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を通じて、小腸内のCD4T細胞におけるメタボリズム、メタボリズム関連遺伝子を改変することで分化誘導が確認されるかについて検討を行なっている。 本年度はレプチンマウスを使用し、小腸上皮内T細胞におけるミトコンドリア代謝、および、酸素消費量について検討を行い、ミトコンドリア代謝、酸素消費量を強制的に遺伝子改変マウスで変化された場合小腸特異的CD4 T細胞が誘導されるかについて検討する。
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Causes of Carryover |
マウスの繁殖に遅れが生じたため、ミトコンドリア解析、代謝経路解析を次年度に繰り越した。マウスの再度の繁殖に成功しており、本年度の計画は予定通り行う。
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