2017 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive regulatory system of oxygen circulation in renal erythropoietin producing cells
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17K19680
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 教郎 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20447254)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 赤血球 / 循環 / 遺伝子改変マウス / 低酸素 / 貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
重篤な貧血時には、腎臓間質から血圧を上昇させる作用のあるレニンが分泌されることをマウスおよびラットを用いた解析から明らかにした。レニンは腎臓の傍糸球体細胞が特異的な産生部位として知られていたが、本研究により、新たなレニン産生の場として、腎臓間質線維芽細胞が同定された。腎臓間質におけるレニン産生によって、腎臓全体のレニン産生量は大幅に増加した。この成果に基づいて、貧血による酸素供給不足の際には、生体は血圧を上昇させ、赤血球の循環効率を高めるシステムを備えていると考えた。しかし、貧血マウスの血圧を測定したところ、正常マウスよりも有意に低下していることがわかった。この結果は、赤血球濃度の低下により血液粘稠度が低下し、血圧が低下したことを示しており、貧血時の血圧低下を防ぐために腎臓間質でレニン産生が誘導され、昇圧系が稼働することが考えられた。実際に、マウスを低酸素曝露しただけでは腎臓間質のレニン産生は誘導されなかった。 腎臓間質は、赤血球造血因子エリスロポエチンを分泌する組織でもあるので、エリスロポエチン産生とレニン産生の関係について解析した。その結果、健常時のマウスでは、エリスロポエチンもレニンも腎臓間質での発現はほとんど認められないものの、貧血時の腎臓間質において、両者は誘導的に発現することをin situ hybridization法により検出した。このとき、エリスロポエチンとレニンを同時に発現する細胞を検出することができたが、多くの間質細胞はいずれか一方のみを発現していた。以上の結果から、腎臓間質線維芽細胞は、エリスロポエチンとレニンを貧血誘導的に産生する能力を備えているが、その誘導機構は異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、新たなレニン産生組織として、腎臓間質を同定し、その発現様式を明らかにすることができた。また、in situ hybridization法を用いて、マウスとラットという異なる生物種において、同じ現象を確認できたことから、腎臓間質におけるレニンの貧血誘導的産生の普遍性を示すことができた。 慢性貧血による腎臓間質におけるレニン産生誘導に加えて、急性貧血によっても腎臓間質でレニン遺伝子の発現が亢進すること見出した。一方、低酸素曝露ではレニン遺伝子発現は変化しなかったことから、貧血によるレニン産生誘導は、低酸素刺激は関与しないことがわかった。エリスロポエチン遺伝子発現は腎臓間質における低酸素刺激によって誘導されることから、貧血時のレニンとエリスロポエチンの産生誘導機構は異なっており、レニンは血圧低下に応答して遺伝子発現レベルが亢進することを示唆された。 以上の成果については論文作成中であり、複数の学会発表を行い、研究内容が評価され学会賞をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓間質におけるレニン遺伝子発現をmRNAレベルで検出してきたが、今後、タンパク質レベルでの貧血誘導性のレニン発現を示す必要がある。そのために、特異性と力価の高いレニン抗体を選定し、免疫化学染色法によりマウスおよびラット腎臓のレニンタンパク質を検出する。また、腎臓間質から機能的なレニンが産生されていることを示すために、血液中のレニン活性が貧血時に誘導されることを示す。さらに、レニンはプロレニンが切断されることにより成熟タンパク質として機能するが、プロレニンにも生理活性があることが知られている。そこで、腎臓間質における貧血誘導性のレニン遺伝子発現によるプロレニンと成熟型レニンの発現レベルを比較する。 腎臓病では、レニン産生過剰による腎性高血圧を併発することがある。そこで、マウスおよびラットの腎臓病モデルを用いて、腎臓間質におけるレニン産生の変化を明らかにする。腎臓間質のエリスロポエチン産生細胞は、腎臓病環境下では筋線維芽細胞に形質転換し、エリスロポエチン産生能を失うことを明らかにしてきたので、レニン産生制御機構に対する病態環境の影響を解析する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、マウス血液中のレニン活性を評価する検出キット(Renin Mouse Assay Kit Fluorimetric SensoLyte 520、114,048円)を多数購入する予定であった。しかし、1キット購入し、測定を行なったところ、検出感度が非常に低く、データの信憑性が低いことがわかった。そこで、本キットの購入を行わなかったため、次年度使用額が生じた。本金額は、次年度に別のレニン活性測定系を試すための経費とレニン抗体の購入に充てる。
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Research Products
(14 results)