2018 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive regulatory system of oxygen circulation in renal erythropoietin producing cells
Project/Area Number |
17K19680
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 教郎 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (20447254)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 貧血 / 遺伝子改変マウス / エリスロポエチン |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子改変により慢性貧血を呈するマウスの血圧を測定したところ、正常マウスよりも有意に低下していた。この結果から、赤血球濃度の低下が血液粘稠度を下げることにより、血圧が降下することが示唆された。そこで、正常マウスに溶血性貧血を誘導し、急性貧血時の血圧を調べた。その結果、慢性貧血マウスよりも赤血球濃度が高いにもかかわらず、急性貧血時には、著しく血圧が低下することがわかった。そこで、貧血の急性期から慢性期にかけて血圧を補正する生体調節機構がはたらいていると考え、主要な血圧調節系であるレニン-アジオテンシン系について解析した。 レニン-アジオテンシン系のなかで、アジオテンノーゲンやアジオテンシノーゲン変換酵素の発現は貧血時に変化しなかったが、腎臓におけるレニンのmRNA発現が増加がすることがわかった。次に、貧血時のレニン産生誘導組織を同定するために、in situ ハイブリダイゼーションを行なったところ、レニンの産生部位として知られている傍糸球体細胞に加え、貧血時には尿細管間質でもレニンのmRNAおよびタンパク質が発現することを見出した。また、腎臓間質のレニン産生は、マウスの低酸素曝露だけでは誘導されなかったので、貧血による低酸素ストレスではなく、血圧低下が腎臓間質レニン産生を誘導することが考えられた。 以上の結果から、貧血時には赤血球濃度の低下により血液粘稠度が低下し、血圧が低下するが、赤血球による酸素供給の恒常性を維持するために、腎臓間質でレニン産生が誘導され、昇圧系が稼働することが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなレニン産生部位として腎臓間質を同定し、腎臓間質におけるレニン産生が全身血圧の変化に応答して調節されていることを発見した。また、高血圧モデルマウスを用いて、血圧が上昇した際には腎臓間質におけるレニン産生量が低下することを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
腎臓病が進行すると、高血圧を併発することが知られている。この腎性高血圧において、腎臓間質のレニン産生が関与している可能性について検討する。そのために、マウスやラットの腎障害モデルを作出し、病態腎臓におけるレニン産生について、in situ ハイブリダイゼーションや免疫組織化学法により解析を進める。
|
Causes of Carryover |
当初計画通りに研究を進めることができているが、複合変異マウスの繁殖が遅れており、マウスの解析個体数が不十分である。必要数のマウスを得るためには最低3ヶ月かかることが想定され、不足分のマウスを解析するための研究期間延長と次年度使用額が発生した。したがって、次年度使用額は主に次年度前半での遺伝子発現解析試薬購入にあてる。
|