2017 Fiscal Year Research-status Report
下垂体腫瘍オルガノイドを用いたテーラーメード創薬への挑戦
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17K19684
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高橋 裕 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (70301281)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | オルガノイド / 下垂体腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではオルガノイド培養の手法を用いて下垂体腫瘍モデルを作成し、その病因・病態解明、ハイスループットスクリーニングによる創薬、そして個々の腫瘍特性に合わせたテーラーメード治療を目指すことを目的として進めている。 方法として、1)対象腫瘍および症例の選定、2)オルガノイド培養条件の最適化、3)腫瘍を用いたオルガノイド培養とオルガノイド細胞株の樹立、4)腫瘍組織およびオルガノイド細胞株を用いた病因の解析、5)オルガノイド細胞株を用いたin vitro低分子化合物スクリーニング、6)オルガノイド細胞株を用いた in vivoモデルの樹立、7)in vitroスクリーニングで有効な薬剤のin vivoにおける効果の解析、8)病因や症例の違いによる薬剤反応性の違いの機序の解析、9)その他の悪性腫瘍および内分泌腫瘍への応用について進めている。現在オルガノイド培養の手法は様々な腫瘍や組織で応用されつつあるが、実際に活用され創薬や病態解明に結びついているのは、一部の腫瘍や神経組織などまだまだ限られている。特に内分泌腫瘍に関しては創薬に対する大きなニーズがある一方で、ほとんど応用されていない状況である。本研究によって下垂体腫瘍の適切なin vivoモデルの樹立と成因解明、創薬スクリーニングへのプラットフォームが整備されることにより、他の内分泌腫瘍や悪性腫瘍への応用が容易である点で大きなインパクトが得られる。またオルガノイドはメチル化などの形質を維持していることが知られており、得られるサンプル量が限られる腫瘍そのものから増殖・維持可能なオルガノド細胞株が樹立されることにより成因解析の重要かつ十分な材料になり得るという点で学術的にも大きな進歩の礎になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、1)下垂体腺腫培養細胞株であるGH3細胞、AtT20細胞株の三次元培養系の樹立とそのホルモン分泌能の解析、2)GH産生下垂体腫瘍12例、ACTH産生下垂体腫瘍6例、PRL産生下垂体腫瘍2例について初代培養系からのオルガノイド株作成プロトコールの最適化を行なっている。種々の増殖因子やシグナル刺激剤、阻害剤の組み合わせの条件を試み、オルガノイド細胞塊の増殖を認めるようになった。現在さらに樹立プロトコールの最適化とともに樹立できた細胞株の表現型解析を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状の課題はオルガノイド株の増殖速度が遅いこと、パッセージによって増殖能が低下すること、ある程度増殖するとさらに増速速度が低下する点である。さらに種々の増殖因子やシグナル刺激剤、阻害剤の組み合わせの条件を試みて最適化の必要がある。 一旦樹立が可能になれば、既知の原因解析(GNAS, USP8などの原因遺伝子)を行い、不明のものについては、エクソーム、メチローム解析による成因の解析を進めることによって病因を明らかにするとともに、ハイスループットスクリーニング系を立ち上げる。具体的にはホルモン分泌能、細胞数を用いたスクリーニングなので上清のホルモン濃度測定あるいはMTTアッセイなどによって多くの検体を扱うことが可能である。すでに製薬会社との共同研究によるハイスループットスクリーニング系についても開発中である。
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Causes of Carryover |
共同研究先からの腫瘍サンプルがどのくらいの頻度で送られるかによって必要な試薬量が規定されていたため当該助成金が生じたが、今年度はオルガノイドを増殖、拡大できる見込みが高いため、適切に試薬で使用できると考えている。
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