2017 Fiscal Year Research-status Report
Ab initio analysis on the pathophysiology of hematopoietic neoplasms
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17K19687
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
森 努 福島県立医科大学, 看護学部, 准教授 (60244373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 俊雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20282527)
合山 進 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80431849)
池田 和彦 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90381392)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | システム生物学 / 遺伝子 / ネットワーク / 血液内科学 / 生体生命情報学 / ゲノム科学 / 腫瘍生物学 / 情報物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
【白血病遺伝子のab initio解析】 研究代表者の森が開発したab initio法(非経験的遺伝子機能推定法)は,遺伝子機能を,実験に頼らずin silico計算のみに基づいて算出できる。本研究はab initio法で造血器腫瘍に関わる遺伝子の機能を予測し,wet実験で検証することにより病態の本質に迫ろうとしている。①研究分担者の北村と合山は,ASXL1異常による急性骨髄性白血病の発症機序を,分子生物学的手法で解析した。②研究分担者の池田は,HMGA2が急性骨髄性白血病を増悪させる機序をマウスモデルで明らかにした。一方,③森は,ASXL1およびHMGA2の生理機能をab initio計算により詳細に予測した。3者の結果を比較したところ,ab initio計算で得られた各々の遺伝子機能と疾患関与の予測結果と,wet実験の結果との間に高い整合性が認められた。 【理論体系の確立】 Ab initio法は,情報物理学に依拠し,遺伝情報を客観的に評価する計算法を採用している。森・河村は,ab initio法が成り立つ理論的基盤を遺伝子間の情報交換特性に求め,一種の物理学的相互作用が働いていることを見いだした。重要なことは,生物学のみならず物理学自体の進歩に寄与する知見を得たことである。遺伝子情報が従う普遍的な特性に忠実な計算法を用いることで,ab initio法の信頼性をさらに高める方法を開発することに結びつけたい。 【治療標的の探索】 Ab initio法は実験に依存しない故に,検査標的を高速に探索できる。森は,腫瘍性疾患の治療薬を開発するべく,ab initio法を応用する戦略を開拓し,有望な遺伝子を見出した。ついで症例検討で,その因子の強発現が実際に予後に大きく影響することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【①ASXL1と関連エピジェネティック因子の機能解析】 ab initio法の計算結果とwet実験の結果はいずれも,ASXL1が病態に関わる重要な特定パスウェイに関与することを明確にした(投稿中)。Dryとwetというまったく異なる方法で,まったく同様の結論に到達したことは,今回の結論の重要性と,ab initio計算の正しさを示した。 【②HMGA2の分子病態学的機能解析】 ab initio計算の結果は,白血病の悪性化にHMGA2が関わることを示した。これに絡むwet実験の知見を論文公表した。 【③ネットワーク生物学の理論体系化】 Ab initio法は,遺伝子の相互関係を数値化することで,遺伝子機能を詳細に計算する。この方法が正しく作動する事実は,染色体がコードする遺伝情報の本質について,重要な示唆を与えるに違いない。私たちは数値化される遺伝子間相互作用の特性分析を進め,一般化した数学的・物理学的手法による理論構築を行うことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
【①エピジェネティックネットワークの描出】 ASXL1とHMGA2は,それぞれエピジェネティクス制御の中心因子であり,多くの関連遺伝子と伴に細胞運命・細胞周期などの制御に関わっている。この制御では,各タンパクの分子構造に基づく機能と同時に,分子ネットワークの構造特性に根ざした機能が主要な役目を果たしている。元来ab initio法は,遺伝子ネットワークを描出するアルゴリズムである為,細胞運命の決定に際しての,ネットワーク構造の変化を把握するのに適している。これらの経路に未特定の因子が含まれる可能性は多分に残されているため,in silicoの速度を活かしつつ,未発見因子の特定および機能解析を進める。 【②基礎理論の完成】 現在までに,ab initio法が情報生物学に留まらず情報物理学と深い繋がりがあることが判明している。一方,情報と物理現象の関わり合いは,現代物理学の中心課題でもある。私たちが得た生物学的知見を通じて,物理学と共有されるほど普遍的な法則の一端を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
研究分担者の北村・合山への経費は,来年度の使用となるため。
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Research Products
(4 results)