2017 Fiscal Year Research-status Report
線維柱帯細胞の可塑性に基づいた新治療開発に関する研究
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17K19729
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷原 秀信 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60217148)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 眼科学 / 緑内障 / 線維柱帯 / EMT |
Outline of Annual Research Achievements |
線維柱帯細胞の上皮間葉転換(EMT)様変化が緑内障病態の一因であるという新たな仮説の元、病的な線維柱帯細胞(EMT様現象を誘導された線維柱帯細胞)にEMTの逆の現象である間葉系上皮転換(MET)の誘導を行うことで、正常な線維柱帯細胞としての機能回復を試みる、細胞の可塑性に基づく新規治療法開発に向けた取り組みとして本研究を行っている。本年度は主にカニクイザル眼球より単離・培養した線維柱帯細胞を使用たin vitro評価を中心に研究を実施した。サル線維柱帯細胞はTGF-β2刺激によりフィブロネクチンやコラーゲンタイプⅠ等の細胞外マトリクスの増加や、F-actinの増加、α-SMA陽性細胞の増加を示し細胞外マトリクス刺激時のEMT様変化と同様の影響が認められた。Transwell chamberを用いた電気抵抗測定ではTGF-β2刺激により電気抵抗の増加が認められた。細胞増殖の影響を検討するためWST-8アッセイを実施した結果、TGF-β2刺激による線維柱帯細胞の増殖が認められ、電気抵抗の増加は細胞増殖および細胞外マトリクスの産生亢進が影響しているものと考えられた。HDAC阻害剤であるボリノスタットはTGF-β2刺激による線維柱帯細胞の増殖を抑制し、さらにfibronectinやcollagen tye1の発現亢進を抑制した。これらの検討により、HDAC阻害剤であるボリノスタットはTGF-β2の線維柱帯細胞に対する作用を抑制することが示され、線維柱帯細胞のEMT様変化を抑制する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験材料として使用しているカニクイザルの供給が不安定であるため、入手に時間を要したが、検討は順調に進めることができた。概要には記載していない他のEMT阻害剤についても評価を進めているところで、おおむね予定通りに研究をすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様に、線維柱帯細胞を用いた解析を進める。他のEMT阻害剤についてサル線維柱帯細胞を用いたin vitro評価系で検討を進める。In vivoのTGF-β2誘導高眼圧マウスモデルの作成を進め、in vitro評価系で効果が認められたものについて評価を開始する。In vivoのモデルマウスの作成に時間がかかる場合も予想されるため、ブタ眼球を用いたex vivoの組織培養灌流実験についても検討を開始する。
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