2017 Fiscal Year Research-status Report
安全性と効率性の高い新規軟骨細胞ダイレクトリプログラミング法の開発
Project/Area Number |
17K19749
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 軟骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイレクトリプログラミングとは特定の転写因子の組合せを遺伝子導入し、皮膚線維芽細胞からiPS細胞を経ずに目的の細胞へと直接分化誘導させる方法であり、様々な再生医学領域でその実用性が注目されている。本研究は、皮膚線維芽細胞から軟骨細胞への分化誘導を可能にする、c-Mycを含まない特定の転写因子の組合せ、すなわちダイレクトリプログラミング因子を選別し、軟骨組織再生へと応用すること目的とする。そのためのアプローチとして、軟骨細胞レポーターマウスを用いた軟骨細胞特異的転写因子の選別およびリプログラミング因子のスクーリングシステムを構築し、軟骨細胞へのダイレクトリプログラミングを可能にする転写因子の組合せを絞り込んだ。平成29年度は主にマウス由来の皮膚線維芽細胞培での軟骨細胞分化誘導作用を確認したが、平成30年度は生体内での軟骨組織形成能を検討していく予定である。また、ヒト皮膚線維芽細胞においても軟骨細胞分化誘導が可能か否かについても検討を行う。 皮膚線維芽細胞を軟骨細胞へと分化させるダイレクトリプログラミングは、非常に難易度が高くチャレンジングな研究テーマである。しかし、本研究により新規の軟骨細胞ダイレクトリプログラミング法が樹立されれば、軟骨組織の再生医療分野のみならず軟骨疾患モデルおよび創薬研究など、将来の革新的医療を担う新しい技術へと研究を発展させることが可能であり、その波及効果は非常に高いと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はダイレクトプログラミング因子の同定を中心に行った。Col2遺伝子プロモーター制御下に蛍光たんぱく質Venusで軟骨細胞をラベルしたレポーターマウスを作製し、軟骨形成が活発な胎生期マウスを用いて遺伝子プロファイリングを行い、軟骨細胞に強く発現する転写因子のクローニングを行った。過去の文献による選定(KOマウスの報告など)やファミリー遺伝子の重複などを考慮した絞り込みを行い、11個の転写因子を(Sox9,Jdp2,Foxc1,Klf2,Bhlhe40, Zcchc5, Nr4a2, Nfatc2, Tcfl5, Foxp1, Pitx1)をダイレクトリプログラミング因子の候補転写因子としてスクリーニングした。さらに、Col2a1-Venus-Tgマウスから初代培養皮膚線維芽細胞を採取し、皮膚線維芽細胞から軟骨細胞分化へのダイレクトリプログラミング効率を評価するアッセイシステムを樹立した。レトロウィルスを用いて11個の転写因子を様々な組み合わせで遺伝子導入し、Venus遺伝子の発現すなわち蛍光強度を指標に最も効率よくCol2a1遺伝子発現を促進する組み合わせを検討し、最終的に4種類の遺伝子に絞り込むことに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に見出した4種類の転写因子の組合せについて、軟骨組織形成が可能か否か多角的に解析を進めていく。さらに、In Vivoでの評価としては、ヌードマウスを用いたコラーゲンペレットにより評価する。すなわち、Col2a1-Venus-Tgマウスから採取した初代培養皮膚線維芽細胞に転写因子の組合せをレンチウィルスを用いて遺伝子導入し、ヌードマウス皮下に接種する。軟骨組織形成能はVenus遺伝子の発現、Col2a1およびAggrecanの免疫染色、またSafraninO染色による軟骨プロテオグリカン産生により組織学的に検討する。 一方、平成29年度の検討では、マウス由来皮膚線維芽細胞では高い軟骨細胞分化誘導能が観察されたが、ヒト由来の皮膚線維芽細胞では4種類の転写因子の組合せによる軟骨細胞分化誘導能が低いという問題が見られた。本研究の最終目的はヒト皮膚線維芽細胞での軟骨細胞ダイレクトリプログラミングであるため、上記のマウス皮膚線維芽細胞の検討に並行して、スクリーニング方法の再検討を行いさらに高効率で軟骨細胞分化誘導が可能な転写因子の組合せも試みる。また、ヒト皮膚線維芽細胞ではなくヒト滑膜細胞を用いるなどで対応していく予定である。
|
Causes of Carryover |
マウスを用いた実験の予備実験が遅れたため、マウス実験が平成30年度に延期されたため。
|