2017 Fiscal Year Research-status Report
Etiology of cleft palate as multifactorial inheritance disease
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17K19754
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山城 隆 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70294428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒坂 寛 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (20509369)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 環境因子 / 多因子遺伝子疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
口蓋裂は顎顔面に生じる体表奇形としては最も出生頻度が高い疾患で、染色体異常や症候性の場合を除き、その多くは合併奇形を示さず複数の遺伝子と環境要因との相互作用で病態が発現する多因子遺伝子疾患である。原因遺伝子は遺伝子改変動物の解析からすでに30以上同定されている。しかし、これだけの疾患感受性遺伝子が同定されたものの、口蓋裂が多因子遺伝子疾患であることを説明する分子機構は解明されておらず、病態発症の本質は未だ不明である。
本研究の目的はいまだ解明されていない多因子遺伝子疾患の根底にあるメカニズムを明らかにすることである。特に、様々な誘因因子による生体への影響が蓄積し、その影響がいかにして病態発症の閾値を超えるのかJak/Stat3情報伝達系に着目して検討する。さらに、ここで得られた知見をもとに次世代の口蓋裂の治療法・予防法としての応用基盤を構築することを目標とする。
昨年度は、Stat3の阻害薬をもちいた組織培養実験から、Jak/Stat3情報伝達経路を阻害すると口蓋突起の癒合が抑制され、Tgfb3の発現が抑制されることを見出した。また、Stat3の発現を制御する因子としてSocs3が関与することを明らかにした。本年度は、環境要因とこれらの分子群の関連も含め、Stat3シグナルが口蓋裂の形成に果たす役割をさらに秋からにする。今後に成果によって、様々な環境因子やシグナル分子がこれらの分子の発現とJak/Stat3の活性に及ぼす影響を網羅的に解析することで、多因子遺伝子疾患の病態発症に関わる分子ネットワークが解明されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、当初の予定通りStat3シグナルの下流で変動する遺伝子群の同定が達成された。口蓋の癒合に関わるTgfb3などが変動することを明らかにした。さらに、Stat3シグナル自体を制御する因子として、Socs3がRunx1シグナルの下流で働くことを明らかにした。これらの成果をもとに、今年度はさらにStat3シグナルが口蓋の癒合において果たす役割を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
Tgfb3が口蓋上皮の癒合で果たす役割は既に確立されている。本研究では様々な細胞外刺激や遺伝要因がJak/Stat3情報伝達経路を介してTgfb3の発現を制御し、癒合上皮の動態に影響を及ぼすメカニズムを細胞レベルおよび分子レベルで詳細に検討する。すでに予備研究で、Jak/Stat3情報伝達経路を阻害するとTgfb3の発現が抑制され、口蓋突起の癒合が抑制されることは見出している。昨年度、切歯においてRunx1ノックダウンの表現型がStat3シグナルを活性化させることでレスキューされることを見出した。本年度はこの所見をさらに発展させて、Stat3を薬理学的に作用させることで、口蓋裂の発生を抑制することができるかを検討する。さらに、アルコール等の環境要因がどのようにしてStat3シグナルに影響を及ぼすかを検討する。
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