2017 Fiscal Year Research-status Report
低酸素応答遺伝子を介した代謝リプログラミングによる口蓋瘢痕形成抑制への挑戦
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17K19758
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
井澤 俊 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (30380017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 栄二 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (40273693)
泰江 章博 徳島大学, 病院, 講師 (80380046)
岩浅 亮彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (90746025)
森 浩喜 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (90779985)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 歯学 / 低酸素応答遺伝子 / 口蓋瘢痕 / 創傷治癒 / 代謝リプログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
口唇裂・口蓋裂患者における裂隙閉鎖術後の瘢痕組織はその強い瘢痕拘縮により、上顎骨裂成長や上顎歯列弓狭窄をもたらし、その結果患者は重篤な不正咬合を呈する。血流画像化装置を用いて口唇裂患者の口唇形成術後の上唇表層部の血流分布の測定を試みた結果、多くの症例において瘢痕組織に限局した明らかな低血流領域がみられたことからも術後の瘢痕組織は低酸素環境下にあることがわかる。創傷治癒過程は上皮、間葉系、炎症性細胞等の相互作用がさまざまな炎症性サイトカインによって複雑に制御されている。マクロファージは低酸素環境に集積する性質があるが、マクロファージ活性化における低酸素シグナルの役割については不明な点が多い。そこで本研究では低酸素ストレスに対する細胞の適応応答の中で中心的な役割を果たす低酸素応答遺伝子HIF1α(hypoxia inducible factor 1α)を分子標的として創傷治癒過程におけるマクロファージの動態について解析することを目的とした。そこで本年度はまず、HIF1αシグナルを介した口蓋粘膜創傷治癒機構を解明するためにHIF1αヘテロノックアウトマウス(HKO)の口蓋に創傷を作製し治癒過程について詳細に解析を実施した。その結果、HIF1α HKOマウス口蓋粘膜では対照マウスに比べて創傷治癒の遅延が明らかとなった。また、口蓋創傷作製後5日目の創傷部組織のリアルタイムPCR解析を行ったところ、HIF1α HKOではMCP-1、MIP-1α、Col1a1の発現低下がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HIF1α HKOマウス口蓋粘膜の創傷治癒過程について詳細に解析することを当該年度の目標としており、HE染色にてHIF1α HKOマウス口蓋粘膜では対照マウスに比べて創傷治癒の遅延を明らかにした点でほぼ計画通りの進捗状況であり、来年度の計画もすでに道筋をたてている。また、口蓋創傷作製後5日目の創傷部組織のリアルタイムPCR解析を行ったところ、HIF1α HKOでは細胞遊走に重要なケモカインとして知られているMCP-1、MIP-1αの発現低下がみられた。さらに、研究成果および論文掲載の準備を進めている段階であることから、概ね順調に進展していると考えられるが、さらに詳細な検討を必要とする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はHIF1α HKOマウスの創傷治癒過程におけるマクロファージの集積状況やM1、M2マクロファージプロファイルの解析、細胞内シグナル伝達メカニズムについて詳細な解析を予定している。以上の内容の実験を遂行する上ではハード面、ソフト面ともに問題はない。
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Causes of Carryover |
HIF1 alpha HKOの個体数確保に時間がかかり、創傷作製実験を開始するまでに当初想定していたよりも時間を要した。また、昨年度研究発表を予定していた学会を一部取りやめた為、繰越金が生じた。次年度の学会参加および資料収集のために使用する予定である。
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Research Products
(9 results)