2017 Fiscal Year Research-status Report
Design of a scaffold for periodontal disease treatment
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17K19767
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 賢 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00322850)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | バイオ界面 / 足場材料 / 細胞-材料間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会が進行している我が国にとって、全身疾患に関与する歯周病に対する対策は重要な課題である。歯周病治療には、ヒト歯根膜細胞(PDL)などの接着、増殖、分化、機能を制御できるインプラント可能で安全な足場材料の開発が極めて重要である。しかし、ヒト間葉系幹細胞などに比べ、PDL細胞の性質や細胞-材料間相互作用に関するデータが少なかった。本研究では、この相互作用に強く影響する、細胞接着の足場になる含水時の材料表面のナノ構造変化に着目した。原子間力顕微鏡(AFM)を用いた研究において、生体親和性に強く影響を与える特定の水和構造である中間水を有する高分子/水界面に数十ナノメートルスケールの微細構造が自発的に形成されていることが確認された。このような微細構造は、中間水を有さない高分子においては観測されず、この微細構造の制御が、細胞の接着挙動のカギであることが示唆された。この微細構造は、微細構造は高分子/水界面領域における高分子と水の相分離現象に起因しており、それにより形成された「Polymer-rich相」と「Water-rich相」が、それぞれ微細構造の凸部、凹部として観察されていると考えられる。血清培地中に含まれる血清タンパク質の吸着サイトを調べたところ、微細構造における「Polymer-rich相」に選択的に吸着することが示唆された。以上の結果から、含水時のナノ微細構造のサイズや間隔によるタンパク質吸着サイトの変化を利用した細胞接着挙動制御の可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホモポリマー系においても、細胞培養環境である含水状態において、高分子/水界面領域における高分子と水のナノ相分離現象を明らかにしたこと。この現象と、タンパク質レベル、細胞レベルでの挙動に相関性が見られることを提案したのは、世界初である。コーティング膜形成後の乾燥時は、平滑性を維持しているが、含水状態にいおかれた際にのみ起こる現象を見出したことは、特定のタンパク質や細胞などの生体成分を選択的に吸着・接着を行うための足場材料の設計にヒントになると考えれれる。
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Strategy for Future Research Activity |
中間水量とタンパク質の吸着、組成・構造変化の相関、中間水量とPDL細胞の接着性の相関、高分子側鎖の構造、側鎖間隔と中間水量、力学物性との関係性を明確にする。また、表面にコーティングした高分子薄膜の表面構造を、最近申請者が見出した原子間力顕微鏡による面内ナノ相分離構造解析および吸着タンパク質のナノ分布や吸着力解析を行う。また、表面物性の異なる材料へのPDL細胞の接着機構に関して、インテグリンの特異的な活性化の観点から考察を行い、水和構造を上位パラメーターとし、非特異的接着機構との差異を材料表面の物性と細胞表面の物性との相関を見出す。これにより、細胞種による接着選択率の高い材料表面設計指針を明確にする。
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Causes of Carryover |
新規合成高分子が予定より多く合成できたので、すべてまとめて生体評価を行うように計画を変更した。
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Research Products
(2 results)