2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19798
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
福田 直子 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40313382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 るり 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50272729)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 健康管理 / 遠隔医療 / 船員 / 外航船 / 船上健康管理 / 健康意識 / 健康行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
船員の災害発生率は陸上労働者と比し非常に高い。内航船員の約50%、外航船員の約25%が50歳以上である。能力ある日本人船員の持続的育成も望まれる中、若者が安心して海の仕事に進むため、高齢化対応として、船陸を問わない健康管理の必要性は大きい。これまで行われていなかった船上船員の健康管理の手段として健康情報をモニターするシステムを以下のように取り組んだ。 ・既に開発し実際に運航している内航商船(国内を航行する船舶)にて実証実験も行った遠隔船舶健康管理システムを外航船(海外を航行する船舶)向けに改良した。新しい主な課題は、利用通信が携帯電話通信から衛星通信に変わり、オンデマンドでの接続としたことである。これは通信環境、通信費など制約の解決のためである。 ・開発したシステムを外航船の搭載し実証実験を行った。2017年7月から日本からシンガポールまでの往復航行する練習船の20歳台~60歳台の乗組員5名を対象とした。実験終了後アンケートを実施し、各人のデータをグラフ化し医師・管理栄養士からのコメントを付けた個人レポートを配布した。 ・技術上の大きな問題やトラブルは発生しなかったが自分の情報画面を開くことと陸上とのコメントのやりとりについては接続操作をしてから行う必要があり、手順が煩雑で衛星通信につながる時間もかかった。そのため、コメントのやり取りや過去の自身のデータを見やすくするといった使い勝手やモチベーションを高めるためのソフト改善も行ったが、十分利用されなかった。アンケート調査にも反映され操作が面倒に感じスピードアップを望む意見が見られた。 ・アンケート調査では自分の健康について今まで以上に意識するようになったとの回答が4人に見られ実験終了後も健康行動を継続する者もいた。本システム導入が直接の保健指導はなくとも健康行動に繋がる効果のある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外航船向けの遠隔船舶健康管理システムを開発し、2017年7月にシンガポールまで往復する練習船にそのシステムを搭載し、5名の乗組員の協力を得て実際に運用した。実際に運用してみて外航向けの遠隔船舶健康管理システムの技術的な問題が抽出され、健康意識の高まりも確認できた。その結果、本システム導入のみで直接の保健指導はなくとも健康行動に繋がる効果のある可能性が示唆され2018年5月第91回日本産業衛生学会で発表した。しかしながら、抽出された問題点を解決すべくソフトの改善も行う予定だったところ、乗組員に後日返却する個人レポートの作成上の問題が新たに明らかになりその問題点の整理に時間がかかったため平成29年度中に実施することができなかった。その点に遅れが生じているが、平成30年度の始めにソフト改善を行い実験対象船の夏の航海に間に合わせる予定であり、遅れの影響は軽微であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の結果で明らかになった外航船向けの遠隔船舶健康管理システムのソフトや通信の問題を検討し改善する。改善されたシステムを外航練習船に搭載し実験を行う。また得られたデータから船員の船上生活習慣の特徴を探索し改善の提案を目指す。
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Causes of Carryover |
外航向け船舶遠隔健康管理システムを外航練習船に搭載し実証実験を行った。実験で抽出されたシステムの問題を解決すべくソフト改善に取り組んだ。その過程で、実験参加者各人に配布する個人レポートの作成の諸問題が明らかになり、新たにソフトの改善策を検討する必要が生じた。その整理と改善策の検討に時間がかかり、実際にソフト制作会社に依頼する改善内容がまとまったのは年度の終わりで、発注が年度内に間に合わなかった。次年度にはソフト改良を発注し今年度の未使用金額も使用する。また改善ソフトが完成した暁には、まず内航船に搭載して試用した上で再び外航船で実験する予定であり、その実験に次年度経費を使用する。
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