2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19814
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤原 純子 島根大学, 医学部, 助教 (20346381)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 法医鑑識科学 / 血痕 / ヘモグロビン / ポータブルラマン / 非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】ラマン分光法は、非破壊・非接触で分析が可能である。ロイコマラカイトグリーンはDNAを分解するなど、従来の血痕検査法は破壊的方法であるため、非破壊の血痕検査法が望まれる。近年ポータブルラマン分光器の利用が可能となっている。本研究では、ポータブルラマン分光器を用いた現場における非破壊の血痕の人獣鑑法の確立を目的とした。 【方法】ヒト、ウシ、ウマ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ニワトリ由来の血液をガーゼに滴下し、血痕を作成した。ポータブルラマン分光器(Enwave Optronics社製)により、血痕資料から直接ラマンスペクトルを測定した。得られたスペクトルデータについて主成分分析を行った。 【結果および考察】従前の研究で、血液の主成分のヘモグロビンは1000, 1368, 1542, 1620cm-1に散乱ピークが観察されることが報告されている。今回ポータブルラマン分光器を用いて測定を行った各動物種の血液でも、これらの散乱ピークが観察され血液の識別が可能であった。これらのピーク強度を用いて主成分分析を行ったところ、各動物種に特有な特徴が観察され動物種の判別が可能であった。ヒトヘモグロビン鎖構造はα2β2、α2σ2であるが、ウシ、ウマ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ニワトリは、それぞれα1β1とα2β2、α1/2β1/2、α2β2、α2βA2とα2βC2、α2β2、αβA/B、α1/2β1、α1β1、αAβ2の鎖構造を持つ。 ポータブルラマン分光器は現場でも使用が可能であり、DNA検査前のスクリーニング法として非破壊でDNA検査に影響を及ぼさず、法医鑑識活動に有用な装置であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポータブルラマン分光法を用いた血痕の人獣鑑別法に関する論文が、Int J legal Med に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
乳児の血痕の同定は、嬰児殺などにおいて重要である。成人のヘモグロビンは(HbA)でα2β2の4量体から成る。一方、乳児ヘモグロビン(HbF)はα2γ2から成る。これらの識別する既存の方法は、破壊検査であり大量の試料を必要とする。そこでラマン分光法を用いた、破壊検査の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画に変更が生じ、翌年度分と合わせて備品を購入する。
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Research Products
(17 results)