2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19814
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
藤原 純子 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (20346381)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / 法医鑑識科学 / 血痕 / ヘモグロビン / 非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】ラマン分光法は、非破壊・非接触で分析が可能で近年法医鑑識科学の分野で応用されている。研究代表者はこれまで、現場で使用可能なポータブルラマン分光器を用いた血痕の人獣鑑別法の確立を行ってきた[1]。更に、今回は乳児と成人の血痕の識別を顕微ラマン分光法を用いて行った[2]。 【試料と方法】死後経過時間が2時間以内の解剖に付された乳児と成人各5サンプルの血液100μLをガーゼに滴下し、血痕を作成した。顕微ラマン分光器により血痕サンプルのラマンスペクトルを得た。 【結果および考察】 アルブミン、グルコース、ヘモグロビンに由来する 754, 1002, 1127, 1248, 1340, 1368, 1560,および 1611 cm-1 にピークが観察された。これは以前研究代表者がポーラブルラマンで報告した結果[1]と同様であった。顕微ラマンは分解能が高いため、さらに 674, 976, 1176, 1105, and 1390cm-1にピークが認められた。 1105cm-1のピークは成人でのみ観察され、乳児では観察されなかった。ガーゼのみのスペクトルを取ったが該当のピークは確認されなかった。ピークのアサインを行ったところ、1105cm-1はhistidineであると考えられた。L-Histidine 粉末のラマンスペクトルに該当するピークが観察された。成人ヘモグロビンの主成分であるHbAは 2つの α chains (141 amino acids)と2つの β chains (146 amino acids)から成り、乳児ヘモグロビンの主成分である HbFは、2つの α subunits (141 amino acids) と2つの γ chains (146 amino acids)から成る。HbA とHbFを比較すると HbFでは 2か所His (His116Ile and His143Ser)が置換している。よって乳児ヘモグロビンで1105cm-1が観察されず、2か所のHis置換 (His116Ile and His143Ser) によるものと考えられた。 1 Fujihara J et al. Int J Legal Med (2017) 131(2):319-322.2 Fujihara J et al. J Forensic Sci (2018) doi: 10.1111/1556-4029.13904.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顕微ラマン分光法を用いた乳児と成人の血痕の識別に関する論文がJ Forensic Sci (2018) に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
ラマン分光法の血痕検査以外の法医鑑識科学への応用を目指したい。
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Causes of Carryover |
繰り越した予算と合わせて備品を購入する予定である。
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Research Products
(15 results)