2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K19820
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高辻 俊宏 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (70163219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 真三 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (50321849)
佐藤 斉 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90285057)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 大気圏内核実験 / 蘚苔類 / フォールアウト / 放射能汚染 / 土壌コアサンプル |
Outline of Annual Research Achievements |
論文や日本分析センターのデータにより、長崎原爆の爆心地から東方向の地域にCs-137の濃度が比較的高い土壌が遠くまであることがわかったため、長崎県島原半島、熊本県に加えて、大分県、宮崎県、鹿児島県、佐賀県の土壌コア試料を30cmないし60cm 採取し、深さ方向に5cmごとに切り分けて測定している。 宮崎市付近の土壌にCs-137濃度(インベントリ) 6800 Bq/m2に達するものが発見された。これは、長崎原爆から東方約3kmにある長崎市西山地区の測定値よりも高い。また、宮崎県椎葉村、宮崎県延岡市、長崎県雲仙市でも高濃度のCs-137インベントリが得られた。その中には、地表よりも地下の濃度が高くなっているものが少なくない。 一方、Pb-210は、地表の濃度が最も高くなっている。Pb-210は天然の大気中ラドン由来であり、年間降下量に大きな変動はないと考えられる。したがって、地下のCs-137は、最近のものではないと考えられ、長崎原爆や核実験由来と考えられる。 地表の濃度とコケの濃度は関係があり、福島第一原発事故後のCs-134が検出されたものについては、Cs-137との割合から、大部分が原発事故由来と判断されるものが多かったが、高知県土佐清水市で採集したものでは、Cs-134の割合が少なかったことから、コケないし地表の放射能が主として原発事故由来であるとは言い切れない。 ゲルマニウム半導体検出器で得られたスペクトルデータを最尤法で高精度分析する試みについては、エネルギーや半値幅の校正法の改良で、前よりよく適合するようになり、既存のソフトウェアの結果に近い値が出るようになったが、同じ試料の繰り返し測定により測定値の変動をチェックしたところ、既存のソフトウェアより大きかった。しかし、NaI検出器で得られた低分解能のスペクトルデータは、高精度に分析できるため、応用は可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長崎県、熊本県、大分県で、長崎原爆爆心地から東方向に放射性セシウムの濃度が高いとする文献や公表データがみつかったことから、当初の計画に比べ九州内に偏った調査となった。地表よりも地下の土壌のセシウム濃度が高い例が少なくないことから、蘚苔類よりも土壌試料の調査に重点が移ったが、特徴的な放射能深さ分布を持つ地点を発見するなどしているため、この点ではおおむね順調に研究が進展していると判断する。 半減期22.3年のPb-210が地表から深くなるほど低濃度になるのに比べて半減期30年のCs-137が深いところで高濃度になることは大きな発見である。 蘚苔類の放射能濃度は、南方向に障害物の少ない地点で濃度が高いなど、周囲の地形と関係があることがわかった。 スペクトルデータの最尤法による高精度分析は、当初のもくろみに反して、市販のソフトウェアよりも高い精度は得られていない。しかし、NaI検出器については、高い精度が得られているため、比較的分解能の低いスペクトルデータに関しては、有効な方法であるという検討がついた。したがって、この点についても研究としてはおおむね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに収集した試料については、測定を続け、放射能の地理的分布および垂直分布の状況を明らかにして、人工放射能であるCs-137が広がる際に何が起こってきたのかをあきらかにする。 当初の動機となった、高知県土佐清水市のコケにみられた高濃度放射性セシウムの由来を解明することに向け、また全国的な把握をおこなうため、調査対象を四国紀伊半島などに拡大する。 放射能調査に加えて当初目指していた、調査地の過去の状況についての調査をおこなう。 調査によって知り得たことをとりまとめ、論文や学会などにより公表する。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究の進展により当初予定していた以上の調査を次年度に実施する必要が生じたため、今年度の物品の支出を別経費で補填するなどして節約に努めた。 (計画) 調査を次年度に実施するために必要な旅費とする。
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Research Products
(6 results)