2017 Fiscal Year Research-status Report
Study of the COX-independent mechanisms in the efficacy of prevention for colon carcinogenesis by NSAIDs
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17K19829
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
友杉 真野 (堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80512037)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | がん / 予防 / NSAIDs |
Outline of Annual Research Achievements |
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による大腸癌予防の可能性は、多くの研究により示唆されており、そのがん予防効果の分子メカニズムは、COX-2の酵素活性阻害によって説明されてきた。一方で、NSAIDsの一種であるスリンダクの代謝体であるスリンダクスルフォンは、COX-2阻害能を有していないにもかかわらず、前癌病変である大腸ポリープの形成を抑制することが複数の臨床試験の結果から報告されている。本研究課題では、スリンダクスルフォンを用いて大腸がん細胞に対する直接的な作用・分子機序を解明することによって、COX-2以外の標的となる分子や経路の同定を目標としている。ヒト大腸がん細胞を用い、予備試験としてスリンダクスルフォン結合タンパク質の精製を行った結果、複数のタンパク質を見出している。H29年度は、これらスリンダクスルフォン標的分子の候補の中から「分子X」の機能解析と、スリンダクスルフォンの作用への寄与について検討を行った。しかしながら、その後の検討の結果、「分子X」は、再現性をもってスリンダクスルフォンの作用への寄与がないことが確認された。そのため、再びスリンダクスルフォン結合タンパク質の結果から標的候補の選定に戻り、新たに「分子Y」に着目した。「分子Y」は、神経変性疾患やがんを含む細胞死制御破綻に起因することが知られている。平成29年度は、「分子Y」の発現抑制によって、ヒト大腸がん細胞に及ぼす影響を検証した。その結果、スリンダクスルフォンの大腸がん細胞への効果と同様に、有意な細胞周期停止作用が認められた。さらに細胞周期関連シグナルの変化についても、「分子Y」の発現抑制による影響を検証した結果、やはりスリンダクスルフォンの効果と同様であった。現在、スリンダクスルフォンと「分子Y」との結合が直接的なものであるか否かの検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画にあった、「分子X」の検討を年度途中まで継続していたが、【研究実績の概要】で述べたように、その結果をもって「分子Y」の検討へと軌道修正を行うこととなり、それによって若干の遅れが生じている。しかしながら、スリンダクスルフォンによるヒト大腸がん細胞への細胞周期停止作用における「分子Y」の関与の証明までの実験は順調に進んでいる。今年度には、本成果について、一部は論文としてまとめていく方向である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、ヒト大腸がん細胞を用いて「分子Y」の関与を検証する実験を引き続き行う。さらに、スリンダクスルフォンの「分子Y」への結合が直接的であるか否か、引き続き検証を進める。加えて、がん細胞だけでなく、抗腫瘍免疫系など腫瘍微小環境に及ぼすスリンダクスルフォンの影響について評価を行う。免疫細胞から産生されたIFNγやTNFαによって、がん細胞のPD-L1の発現が誘導され、その結果、がん細胞は免疫系に排除されなくなることが報告されている。ヒト大腸がん細胞を用い、IFNγ刺激によるPD-L1の発現誘導をスリンダクスルフォンが抑制しうるか検討する。既報では、NSAIDsのセレコキシブによる大腸がん細胞に対するNKG2DLの発現誘導作用が報告されている。この効果は、COX非依存的作用であると述べられている。スリンダクスルフォンについても、大腸がん細胞に対するNKG2DLの発現への影響を検討する。 また、NSAIDsが大腸がん細胞に対し、抗腫瘍性サイトカインTRAIL誘導性の細胞死を増強することを、申請者らも含め、複数の研究者が報告している。しかしながら、一方のTRAILへの影響についての検討はほとんどなされていない。本研究ではTRAILを含め、各種サイトカインやケモカインなどの発現レベルへのスリンダクスルフィドの影響を検証する。 これまでの結果を受けて、動物モデルにてスリンダクスルフォンの作用機序についても検討を行う。マウスにスリンダクスルフォンを一定期間投与した後、腸管や腸管関連リンパ組織等を採取し、スリンダクスルフォンの標的候補分子「分子Y」の発現への影響について検証する。また、制御性T細胞(Treg細胞)は炎症の抑制や抗腫瘍免疫の抑制に重要な役割を果たしている。スリンダクスルフォンによるTreg細胞数への影響について検証する。
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