2017 Fiscal Year Research-status Report
児童虐待予防強化のための新たなシステム開発をめざしたフィンランドとの国際比較研究
Project/Area Number |
17K19830
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
横山 美江 大阪市立大学, 大学院看護学研究科, 教授 (50197688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 早苗 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (50423885)
福島 富士子 東邦大学, 看護学部, 教授 (80280759)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | フィンランド / 母子保健 / ネウボラ / 比較研究 / 保健師 / 母親 |
Outline of Annual Research Achievements |
児童虐待は,アメリカやヨーロッパ等の先進諸国や発展途上国でも多発しており,しかも多くの国々で増加傾向にある。わが国においても,児童虐待の相談件数は統計データを公表し始めた1990年度から比較すると2012年度には約60倍に膨れ上がっており,死亡事例も多発している。虐待行為は,被虐待者の後の人生においても深刻な影響を及ぼし,ひきこもり,うつ状態,自傷行為,暴力行為,薬物乱用,さらには自殺をも誘発させることが報告されている。また,虐待の影響は被虐待者への影響に止まらず,被虐待者が親になった時には,その子どもに自らが虐待行為をするといった虐待の連鎖が生じやすいことも指摘されている。このような児童虐待に対しては未然に防ぐことの重要性が指摘されており,児童虐待予防対策の検討が急務となっている。一方,フィンランドでは児童虐待に関する事件はほとんど発生していない。フィンランドは, 妊娠中から出産後の学齢期に至るまで頻繁かつ継続的な支援がなされるなど,WHOも注目する優れた母子保健システムが確立している。本研究では, 児童虐待の発生が極めて稀であるフィンランドの育児環境と,虐待による死亡事例も多発している日本の育児環境を出生人口に基づいた疫学研究の手法を用いて比較分析することにより,日本の育児環境の問題点と特徴を明らかにし,児童虐待予防を強化するための日本に適した新たな母子保健システムを開発することを目的としている。今年度の研究では,4か月児をもつフィンランドの母親の健康状態と日本の母親の健康状態を比較検討した。その結果,フィンランドの母親の方が、日本の母親に比べ,主観的健康感が有意によいことが判明した。また,それに関連する要因として,保健師の育児情報が関連していることが示された。この研究結果に基づき,日本の自治体において適用可能な母子保健システムについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較研究については,European Jounal of Public Healthに掲載された。本研究に基づき,学会でのシンポジウム等で報告も行った。また,本研究結果に基づき,日本の自治体において適用可能な母子保健システムについて検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力自治体(日本は大阪市)において,基礎調査と並行し,構築した母子保健師システムの有効性について,個人情報を全て削除した健診データと調査データをもとに疫学的観点から分析する。また,海外の共同研究者を日本に招聘し,フィンランドの母子保健システムについて評価方法を含めたシンポジウムを計画し,日本における評価方法についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
共同研究者が次年度に繰り越したため。
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