2021 Fiscal Year Research-status Report
医療現場における大規模データを用いた医療事故状況の再現に関する研究
Project/Area Number |
17K19843
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
和田 淳 東京医科大学, 医学部, 兼任准教授 (10246291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦松 雅史 東京医科大学, 医学部, 准教授 (00617532)
筧 淳夫 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (30370951)
藤澤 由和 宮城大学, 事業構想学群, 教授 (70387330)
大坪 陽子 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (60811669)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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Keywords | 医療事故 / ボイスレコーダー / 音声記録 / 医療安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、医療事故の原因究明のための情報取集に関しては、事故関係者、当事者への聞き取りが主たるものであり、実際に何が起こったかを客観的に判断することが困難である場合が多い。その背景には当事者らの記憶が曖昧であったり、正確に覚えていられない状況に置かれていたりするためである。医療事故の再発予防のためには、原因を正確に判断することが必要不可欠であり、そのための情報が必要となる。そこで本研究は、医療行為を平時から記録するための仕組みを構築することで、事故が起こった際に、事実をより詳細かつ客観的に把握しうるデータを取得し、それらを活用して医療安全対策をより効果的なものとすることを目的とした。 また本研究における具体的な目的は、個々の医療従事者の様々な行動に着目し、その包括的な把握を試みることであるが、なかでも音声データに着目をすることにより、より効果的な医療従事者らの行動把握を目指した。ただし、航空機などのように、コックピットという閉鎖空間での操縦者らの音声を記録することは、万が一の場合に何が起こったのかを後から検証することが可能であるが、医療現場は手術室、ICU、救命救急センターなど広い空間での事故が多く、単一のボイスレコーダーでの記録では事故を正確に再現することが困難である場合が殆どである。 そこで本研究では、医療従事者各人が具体的な臨床現場において、携帯性に優れたボイスレコーダーを保持し、音声データを記録する環境を構築し、具体的な仮想的状況下における音声データの取得の可能性の検証を試みた。また取得データの容量が大規模なものとなることから、データの同期等および分析に関する方法論に関して検討を行い、具体的な手術現場におけるデータ把握のための環境構築の可能性の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
音声取得のための環境構築を行うに際して、既存の機器を用いての状況把握およびそのデータ品質に関して生じた課題に対する知見を積重ね、シミュレーション状況下における音声データ取得のための環境設定を試みてきたところであるが、現存の機器(ボイスレコーダー)、およびソフトウェアを用いての当該研究課題の検証は不可能ではないが、事故状況の再現という観点からみた際の、音声データの品質という点に関しては、当初の想定とは著しく異なるものであることが、改めて判明した。そこで、こうしたレベルの音声品質であっても検討可能な、シミュレーション状況とそれに基づく環境設定を再度、検討する必要が生じてきた。さらにシミュレーション状況下における環境設定に関して、現実への適応を前提とした場合、その適切性を担保するための基準を明確なものとする必要があるのであるが、実際の臨床現場がCOVID-19のため、全く利用できないとい状況が生じたため、具体的な環境設定のための具体的な情報や条件設定を行うことがほとんど不可能であったといえる。くわえてこうした変更に伴い、取得することを想定しうるデータの分析を行うためのプロトコルの作成に関しても、再度検討が必要となる状況にあった。 さらにこうした状況を踏まえ、データ取得のための具体的な環境設定のための準備作業を行うに際して、COVID-19への対応が求められる医療機関における現状では、難しい状況にあったため。
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレーション状況下における音声データ取得のための最適な環境設定の検証およびその準備とそのための分析手法の再検討を行い、これらに基づいて、具体的な臨床現場への適応を前提とした音声データの取得条件の検討を実施し、具体的なデータ構築に向けての環境設定等の準備作業とデータ取得作業および取得されたデータの分析等を行い、研究の取りまとめを実施する。 環境設定に向けては、複数の段階における作業工程の実施と検証作業に関して研究組織において再度検討を行い、具体的な作業内容と役割分担の再検討を行うこととする。こうした状況を踏まえ、音声データの取得のための臨床現場におけるデータ取得のための実施プロトコルを作成し、実際のデータ取得に向けた準備作業を行う。 実際のデータ取得作業に関しては、データ取得のためのディバイスに関しては一定程度検討がなされているため、それに基づいた取得データの検証を行い、これら検証を踏まえた実際の臨床現場におけるその適応可能性に関しての検討を併せて実施する。 最終的にこれらの作業を踏まえ、その成果の取りまとめを行うこととする。
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Causes of Carryover |
(理由) 実際の臨床現場において音声データを取得する作業、およびそうした作業の結果から取得されたデータの分析手法およびその実際の臨床現場における適応可能性に関して、状況的に着手しえなかったため。 (使用計画) 実際の臨床現場を前提とした環境設定に関しては、より現実における諸条件を加味して状況設定を行い、その内容の検討を事前に行う必要がある。そこで、これらの検討にむけて研究組織において最終的な検討を行うための費用が必要となる。同様に検証に関しても、研究組織外の専門家に作業を依頼することを想定しており、そのための費用が必要となる。 加えて、医療従事者らの臨床現場における行動データの取得可能性の検証に際しても、事前の確認作業が必要であり、そのためのディバイスおよび取得データの検証作業に費用を充てる予定である。また研究成果の公表に向けて、必要な費用を用いて、成果発表を行う予定である。
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