2017 Fiscal Year Research-status Report
Vav遺伝子欠損マウスを用いた抗酸化機能食品の緑内障予防効果の検討
Project/Area Number |
17K19876
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 馨 北海道大学, 保健科学研究院, 特任教授 (80133718)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 卓 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (30196836)
藤川 恵子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (70374246)
相原 一 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80222462)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 緑内障 / 遺伝子改変マウス / 予防食品 / フラボノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
近年フラボノイドを含む食品が健康に良いという意識は広く知られており、視覚の維持にも効果があるといわれている。しかし、その科学的根拠は未だ乏しいといえる。その原因の一つとして考えられるのは、食品の効果を検証する評価系が不十分だということである。これまでは食品の成分分析をして効果が期待される成分を取りだし、細胞レベルで成分の効果を検証することが行われてきた。しかし、経口摂取から関係する器官にどのように達して、どのように働くかを統一的に評価することは困難である。この問題を解決するには in vivo での食品の機能を評価できる動物モデルの構築が最も有効な手段と思われる。 日本人の失明原因の第1位は緑内障であり、40歳以上の20人に1人の割合で発症する。眼圧の影響を受けて網膜上の網膜神経節細胞(RGC)が損傷を受け細胞死にいたる。それにより視野欠損が起こり、病態は不可逆的に進行し最終的には失明に至る。そのため緑内障の治療には早期発見と疾病予防対策が求められている。 我々は自ら開発したVav2遺伝子の欠損マウス(Vavマウス)の表現型に高眼圧が有ることを発見した。生後6週から眼圧が上昇し、10週で正常マウスに比較して20%程度の上昇に達し、以降漸次減少する。これと平行して視神経乳頭の陥凹と網膜神経節細胞の脱落を認めた。これはヒト緑内障の病態に近似している。次にRGCが蛍光発色するCFPマウスとVavマウスを交配し、CFP/Vavマウスを作成した。これによりマウス個体毎に眼圧とRGC数を定量的に計測することが可能なマウスが作成された。 本研究の目的はフラボノイドを含む食品を緑内障モデルマウスであるCFP/Vavマウスに給餌し、眼圧下降効果とRGC数減少抑制効果を調査して、対象食品が緑内障の進行を抑制する効果があるか検証することである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑内障の進行を抑制する食品の候補として抗酸化機能を持つ適切な食品を検討した。アスパラガス擬葉および各種ベリー類(ブルーベリー、ハスカップ、アロニア、ラズベリー、シーベリー、カランツなど)果実に含まれる抗酸化成分のプロファイリングを行った。抗酸化能評価には、ESRスピントラップ法を用いた。これにより、生体内で発生する各種ラジカルについて、ラジカル種ごとの補足活性測定を行った。各種フリーラジカル発生試薬、材料抽出液及びススピントラップ剤(CYPMPO)を混合後、紫外線照射した。この場合、生成し試料中に残留するラジカルは、CYPMPOにトラップされてアダクトを形成し、ESR特有の波形を示す。抽出液によるラジカル消去能の高・低は、振幅の小・大に反映される。この原理に基づき、Troloxを外部標準として材料の抗酸化能を評価した。 結果としてルチンを多く含むアスパラガス擬葉が抗酸化作用が高く、食品として加工が可能であること、食品中でのルチンの安定性が高いことを考え合わせるとアスパラガス擬葉は緑内障予防食品の検査対象として適切と考えられた。 評価系として用いるマウスは、我々が所持するVav遺伝子欠損マウスとジャクソンLABから購入したCFPマウスを交配して必要量のCFP/Vav2マウスを準備した。
|
Strategy for Future Research Activity |
食品の緑内障予防効果を検証するために、アスパラ擬葉粉末を購入しマウス一般飼料にルチンが0.2%になるように言入させた粉末飼料を作成する。CFP/Vavマウスとコントロールマウスをそれぞれ食品投与群(グル-プA)とプラセーボ投与群(グル-プB)にそれぞれ10匹分ける.グル-プAに緑内障予防効果が期待される食品を給餌する。 CFP/Vav2マウスとCFP/WTマウスに関して生後8週齡、10週齢、12週齢、14週齡マウスに対して3日間、昼間と夜間に計測する。眼圧はトノラボ手持眼圧計(ICARE)を用いて非侵襲的に測定する。計測値の信頼性を得るためにマウスと測定装置の両者を固定装置で固定し、3回の測定を行い、その平均値を眼圧とする。 食品投与が終わったに眼球を摘出し4%PFAで固定後、網膜フラットマウント標本を作製する。蛍光顕微鏡下で視野内に200×200μmの矩形を表示し、その範囲内の蛍光発色するRGCの数を目視により計測。3回計測し平均値をRGC数とする。計測部位は視神経乳頭を中心に耳側、鼻側、上方、下方の四方向合にそれぞれ600μm間隔で遠位、中間部、近位の3部位を設定し、網膜全体で合計12部位の計測を行う。
|
Causes of Carryover |
分担研究者の相原一が100,000円物品使用予定であったが、使用が0円となった。この100,000円は次年度の物品使用費とする。
|