2018 Fiscal Year Research-status Report
新しい栄養代謝産物センサーに注目したエピジェネティクス制御システムの解明
Project/Area Number |
17K19889
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関谷 元博 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50420245)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | エピゲノム / インスリン / 膵β細胞 / 代謝産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
CtBP2のエピジェネティクスを介した遺伝子発現制御についてまずは膵β細胞から解析を行った。様々なヒストン修飾のChIP-qPCRを行うと、CtBP2はH3K4me2,H3K4me3を増加させるなど膵β細胞においてはインスリンプロモーターをopen chromatinにする方向でエピゲノムを調節していた。これによってCtBP2はインスリン遺伝子発現を正に制御していた。 またそうしたエピゲノム修飾を行うCtBP2の転写因子複合体の概要を分子生物学的に同定した。本複合体は仮説の通り、膵β細胞においてもNADHや脂肪酸CoAといった代謝産物に反応する性質があり、代謝の変化を受けてエピゲノム調節が行われる現象の一つの鍵分子であることが示唆された。その生体内での役割を示すために、いくつかのin vivoの実験を行った。免疫染色では遺伝的肥満モデルマウスや食事誘導生肥満モデルマウスといった肥満モデルにおいてCtBP2の発現が著明に減少しており、膵β細胞特異的CtBP2欠損マウスを作成すると、耐糖能の悪化、体重の減少傾向が認められた。 これまでCtBP2の膵β細胞における役割を論じた既報は存在しないが、インスリン分泌に重要である解糖系に依存して産生される細胞質のNADHとこれまたインスリン分泌に重要な役割を示唆されている脂肪酸CoAに反応するシステムという意味では膵β細胞の生物学に新しい一面を書き加える仕事と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝臓やその他エピゲノム修飾の遺伝などにも踏み込みたいところであったが、今のところ膵β細胞のみの探索にとどまってしまっている。膵β細胞の発見も論文化を考えた際にはまだ細部が詰め切れていない。体調の問題なども影響があった。また組織特異的欠損マウスの解析において以下の全身性の制御機構が当該組織の欠損を補填してしまう部分があり、これが予想外に研究の進行を遅延させた。 が逆に、申請時には判明していなかったが、CtBP2の全身性の恒常性維持機構のような新しい展開も発見することができ、全身性のエピゲノム恒常性維持を行っている可能性があり、想定外の新しい展開を切り開ける可能性も見いだしてはいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は膵β細胞の知見に関しては論文化にむけて細部を詰めていく。他の臓器や新しく同定された全身性の制御機構なども引き続き検討していく。また本分子を中心とした代謝制御機構自体が新しく、肝臓の表現型に関しては論文投稿中であるが、エピゲノム制御にかかわらず論文投稿を進め、世界に発信していく。
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