2017 Fiscal Year Research-status Report
生体内で筋線維タイプを同定するバイオイメージング技法の開発
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17K19897
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
狩野 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90293133)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋線維組成 / ミトコンドリア / フォトサーマル顕微法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,フォトサーマル顕微法による光熱反応の特性を筋線維タイプ毎に評価することを目的としている.生きた個体の筋線維に蛍光プローブ負荷などの前処理を施すことなく,筋線維タイプに依存する筋原線維やミトコンドリア由来の信号特性を明らかにする. 平成29年度は,基礎的なデータを取得するために,摘出した筋サンプルで実験を行った.組織化学的な染色による筋線維タイプの分類とフォトサーマル信号(in vitro実験)による分析を実施した.ラットの遅筋タイプ(ヒラメ筋),速筋タイプ(長趾伸筋),混在タイプ(足底筋,前頚骨筋)を摘出し,組織化学的(MHC抗体,ATPase酵素染色)な染色を施した.連続切片を作成し,染色した切片と無染色の切片をスライドガラス上に置き,波長領域の異なるレーザーを照射し,フォトサーマル顕微法による信号を検出した.その結果,無染色で検出できるフォトサーマル信号を画像化することに成功した.今年度実施した観察条件では,ミトコンドリアの染色像とフォトサーマル信号による画像が類似しており,ミトコンドリア由来の信号を画像化できることが明らかにされた.今後は,in vivo環境下での観察モデルの構築を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,筋線維タイプの同定のために「フォトサーマル顕微法」に着目した.この方法は無蛍光性分子を高感度で検出する光学測定法である.細胞内の光吸収性分子が励起光を吸収することで熱が発生し,それにより分子近傍の屈折率が変化する.この屈折率変化を検出光の透過率変化として検出し,筋細胞の速筋と遅筋に特徴づけられる信号特性を評価することで,筋線維タイプの同定が可能であるかもしれない. 平成29年度に実施した簿切した筋サンプルでのi n vitro観察では,ミトコンドリアの形状を詳細に捉えることに成功した.また,この画像から3次元画像を得ることも可能であった.これらの研究成果は,計画段階よりも速いペースで解析が進んだ結果であり,現在は,in vivo観察モデルのための測定機器の改良に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はin vivo実験の確立を目標とする.この方法の特徴は蛍光プローブなどを必要としないため,観察のための前処理が不要である.これまでに,顕微鏡観察に適した薄膜状の筋を利用したバイオイメージング観察法を確立しており,このシステムを応用する予定である(Am J Physiol, 2008,2013,2016).フォトサーマル顕微法は検出光の微弱な相対強度変化を検出するために,信号対雑音比(SNR)を向上させることが重要である.SNRを増加するために信号の散乱や屈折率を計算し,実験システムを構築する.昨年度までにミトコンドリアに局在する信号をフォトサーマル顕微法によって画像化することに成功している.筋原繊維の配列やミトコンドリア形状ならびに分布パターンの特徴を速筋と遅筋タイプの線維毎に見いだし,その特異性を明らかにする.それらが成功すれば,無染色の生きた筋組織の筋線維タイプを同定することが可能となる.
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Research Products
(2 results)