2017 Fiscal Year Research-status Report
液性因子SPARCに着目した膵ホルモンを介さない血糖調節機構
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17K19902
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
武田 純 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40270855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 幸男 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (10323370)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 膵島分泌タンパク / 肝インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
「SPARC (オステオネクチン) の糖脂質代謝への影響」 Ad-オステオネクチンを過剰発現したマウスの肝臓ではグルコキナーゼ(GK)、PAI-1の発現増加がみられたが、培養肝細胞、単離肝細胞においてもAd-オステオネクチンを感染させたところ、GK、PAI-1の発現誘導が認められ、これらが肝細胞におけるオステオネクチンのオートクリン、パラクリン両作用の効果であることが確認できた。また上記マウスにて、脂肪組織の萎縮と萎縮脂肪細胞でのGLUT4やレプチンなどの成熟脂肪細胞で発現レベルの高い遺伝子の低下が認められた。さらに中性脂肪含量増加によると思われる肝臓重量の増加や、インスリン変化を伴わない空腹時および随時血糖の低下等耐糖能の改善が認められた。即ちインスリンに依存しない肝の糖取込みの亢進または糖放出の抑制と血糖降下に誘導された体脂肪分解と肝への移行が認められた。
「オステオネクチン遺伝子多型と糖代謝関連マーカーとの関連解析」 既知のオステオネクチンに関しては全エクソンのシークエンスを終了し、3個のcSNPを獲得している(1個はミスセンス変異H211Q)。既に14個の頻度の高い(15%以上)のiSNPをこの遺伝子領域に獲得しており、患者800名、健常者600名の遺伝子タイピングを終了した。その結果イントロン1のSNPで糖尿病発症との関連傾向(MAF 0.48, p =0.051)が認められた。予備実験で血中濃度と相関する遺伝子多型を獲得しているが、引き続き血中濃度との相関解析や、ハプロタイプと詳細な糖尿病の表現型、Agatstonスコアなど動脈硬化の定量指数、レプチン、アディポネクチン、アポ蛋白、高感度CRP、TNF-α、IL6、PAI-1など他の診断的意義が確立されている液性因子との大規模関連解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SPARC (オステオネクチン) は膵島から門脈に放出されて肝臓で機能するので、分泌量の多寡を強調して影響を解析することは効果的であると考え、計画の準備段階で過剰 (TG) マウス(膵β細胞で高発現)を作成し、糖負荷、肥満、高脂肪食、種々の薬剤の効果を個体レベルで検討した。一方、ゲノム編集を用いたオステオネクチンKOに関しては、一過性のトランスフェクションではうまく編集されず、現在ピューロマイシン耐性のベクターを用いて条件設定中であり、これに予想外に時間をとられている。
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Strategy for Future Research Activity |
「SPARC (オステオネクチン) 異常型実験動物の解析」 アデノウィルス発現ベクターをマウスあるいはラット個体で発現させて、これらの動物について、運動負荷、種々のストレス負荷、食餌の変化など異なる環境因子の条件下で飼育し、オステオネクチンの血中濃度と表現型および環境因子に対する応答性の関連を検討する。即ち関連臓器と種々の環境条件を組み合わせることによって、個々の表現型に有意に関連する遺伝子セットを浮き上がらせる。また各種糖尿病モデルマウス、ラットでの血中濃度、各組織発現レベルを病期と合わせて検討する。高脂肪食およびob/obマウスのみではNASHのような繊維化を伴う脂肪肝は得られないため、これらのマウスにAd-オステオネクチンを過剰発現させ、NASHのモデルとなるか検討する。また、肝繊維化を来す四塩化炭素投与マウスでの肝繊維化形成過程での血中オステオネクチン濃度の関連についても検討する。
「オステオネクチン測定の臨床応用」 ヒトにおける オステオネクチン アッセイ系を開発している。岐阜市の調査研究では参加者の血液が保存されている。5年後の追跡調査も行われている。正常型、境界型、糖尿病型における血中レベルを測定し、診断的意義について検討する。また、2型糖尿病患者において、食事療法、インスリン注射、抵抗性改善薬、SU薬、インクレチン薬に対する オステオネクチン の分泌応答を調べ、感受性体質と薬剤効果の血中診断法の可能性を検討する。また正常者と肥満患者で、血中脂質、アディポサイトカイン、動脈硬化指標との関連を検討し、予測的な診断法を開発する。また、療養指導の効果判定マーカーとしての可能性も検証する。
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Research Products
(2 results)