2017 Fiscal Year Research-status Report
Relationship between dietary rhythms and brain functions with consideration of multiple life stages
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17K19914
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安尾 しのぶ 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30574719)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 概日時計 / 食事リズム / 情動 / 記憶・学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、24時間営業店や交替制勤務、夜間におけるパソコンやスマートフォン等の長時間使用による生活リズムの乱れが子ども・大人を問わず問題となっている。不規則な生活による概日時計(体内時計)の乱れは気分障害・記憶障害などの脳機能障害と深く関与しており、緊急の対処が必要である。本研究では、マウスを用いて、食事を正しい時刻に摂取する「時間制限摂食」が情動・記憶・学習などの脳機能に及ぼす効果を解析した。 マウスの活動期にあたる暗期にのみ給餌する群(暗期摂食群)と、休息期にあたる明期にのみ給餌する群(明期摂食群)を設定し、時間制限給餌を3週間行った。各群について、明期と暗期に各種行動試験を行った。オープンフィールド試験では移動距離や中央滞在時間に群間の差は見られなかったが、強制水泳試験では無動時間に摂食時間と試験時間の交互作用が見られた。すなわち、暗期摂食群では明期に無動時間が長かったが、明期摂食群では逆に暗期で無動時間が長かった。この結果は、行動試験時の摂食状況によってうつ様行動が影響を受けたことを示唆しており、時間制限給餌の影響が正確に検出されなかった可能性がある。 そこで次に、1日2時間x 2回の時間制限給餌を朝型・夜型のパターンで行った。朝型群は暗期開始時と暗期中央に、夜型群は暗期中央と明期に給餌時間を設定した。行動試験を食間(最後の給餌から4時間以上)に設定し、行動試験時の摂食の影響を排除した。その結果、強制水泳試験において、明期・暗期を通して朝型群で有意に短い無動時間が見られた。さらに、空間記憶・学習試験であるバーンズ試験を行った結果、朝型群では夜型群よりも高い記憶力が見られた。以上の結果から、朝型の食事パターンで摂食すると、夜型の食事パターンに比べて、うつ様行動が低くなることや、記憶力が向上することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の条件設定では時間制限給餌の影響を正確に検出できなかったが、給餌のタイミングに工夫を加えて、1日2時間x2回の給餌スケジュールで朝型と夜型の食事リズムの影響を解析した。うつ様行動や空間記憶行動に対して食事リズムの明確な影響が検出されるなど結果が順調に得られ、当初の目的であった食事リズムと脳機能との関連が明らかとなった。行動の表現型が明確に得られたことで、次年度からの遺伝子の発現解析や神経新生の解析、またライフステージを超えた影響の解析に向けて、強力な基盤が築かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究において、朝型と夜型の食事リズムにより、うつ様行動や記憶・学習行動に明確な差が生じることが解明された。平成30年度は、このような行動変化の背後にある分子神経メカニズムを解明するため、朝型・夜型の食事リズムが海馬の時計遺伝子やその制御下にある神経新生、また神経調節関連遺伝子の発現に及ぼす影響を解析する。 平成29年度と同様に朝型・夜型の時間制限給餌(1日2時間x2回)でマウスを飼育する。各群のマウスにチミジンアナログであるBrdUを腹腔内投与し、神経新生が盛んである海馬や脳室下帯におけるBrdU免疫陽性細胞数を調べる。また、海馬における時計遺伝子や神経新生のマーカー遺伝子群、神経栄養因子などの発現の日内リズムを解析する。 平成30年度はさらに、幼少期における時間制限給餌の影響が、成熟後の脳機能に与える影響を明らかにする。離乳直後のマウスを用いて4週間の朝型・夜型の時間制限給餌を行い、自由摂食にして十分な成熟までさらに4週間飼育する。時間制限給餌が終了した時点と、自由摂食で4週間飼育した時点において、オープンフィールド試験、強制水泳試験、バーンズ迷路試験を行う。また、上記処理を行った成熟マウスの海馬を用いて、朝型・夜型の食事リズムで変化する遺伝子発現や神経新生を解析する。
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Causes of Carryover |
理由:購入を予定していた必要消耗品の品質確認に時間がかかり、入荷が遅延したため、150,729円の残金が生じた。これは次年度に物品費(消耗品)として使用予定である。 次年度の使用計画:物品費1,540,729円(次年度助成額1,390,000円+今年度未使用額150,729円)の内訳として、実験動物と飼育用品で300,000円、試薬1,000,000円、ガラス・プラスチック器具240,729円を予定している。旅費、人件費・謝金、その他についての変更はない。
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[Journal Article] Early-life photoperiod influences depression-like behavior, prepulse inhibition of the acoustic startle response, and hippocampal astrogenesis in mice2018
Author(s)
Takai Y, Kawai M, Ogo T, Ichinose T, Furuya S, Takaki N, Tone Y, Udo H, Furuse M, Yasuo S
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Journal Title
Neuroscience
Volume: 15
Pages: 133-143
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] l-Serine enhances light-induced circadian phase resetting in mice and humans2017
Author(s)
Yasuo S, Iwamoto A, Lee SI, Ochiai S, Hitachi R, Shibata S, Uotsu N, Tarumizu C, Matsuoka S, Furuse M, Higuchi S
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Journal Title
Journal of Nutrition
Volume: 147
Pages: 2347-2355
DOI
Peer Reviewed
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