2017 Fiscal Year Research-status Report
可溶化メラニンによる抗アレルギーおよびがん抑制の実証とメラニン受容体の探索
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17K19935
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
川本 善之 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (10410664)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | メラニン / アレルギー / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は独自に作製した可溶化・可溶性メラニンを用いて、抗アレルギーおよび抗がん抑制をマウスモデルで実証しつつ、作用メカニズムを解明すべく、メラニンの標的分子を同定することを目的として行った。これまで実験を行った結果、DNP特異的IgE感作によるアレルギーモデル受動的全身性アナフィラキシーモデル)において、可溶性メラニンを静脈内注射、腹腔内投与、胃内強制にて前処置し、抗原投与による体温変化を測定した。その結果、当該物質を胃内強制投与処置した場合に、アナフィラキシーによる一過的な体温低下の早期回復が確認された。このことから、可溶化メラニンはマスト細胞を介するⅠ型アレルギーの緩和に寄与できる可能性が示された。なお、メラニンのゾンデ投与による体重変化や食餌量に変化は見られなかった。 次に、ヌードマウスに対するヒト乳がん細胞(HeLa)の皮下移植モデルに対し、移植がん細胞の近傍に可溶化メラニンを注入した浸透圧ポンプを外科的に埋め込み、腫瘍の成長を計測した。その結果、可溶化メラニンの持続的な体内放出により、近傍のがん細胞の増殖が有意に抑制された。この結果から、可溶化メラニンはマウス個体での移植がん細胞の増殖を抑制できる可能性が示された。がん移植モデルに対し、胃内強制投与による効果が期待され、現在検証を進めている。 一方、株化がん細胞において、可溶化メラニンと相互作用するタンパク質分子をプロテオミクスの手法を用いて探索した。その結果、標的分子となりうる複数の分子が同定された。これらの分子が可溶化メラニンと直接相互作用するかどうかの検証が必要であるが、株化細胞の種類を変え、共通の分子が同定されるかどうか、検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレルギーおよびがん、いずれのモデルにおいても、可溶化メラニンによる一定の効果が得られつつある。マウスの個体差が大きく、検体数の増加を行い、再試験を実施する必要があると考える。また、どのモデルでも投与法、投与濃度、投与期間といった検討項目があり、すべて実施できたわけではないため、今後より効率的かつ低用量で効果を示す方法を模索していきたい。加えて、いくつかの可溶化メラニンの標的候補がプロテオミクス解析により見いだされ、一定の結果を得た。これらが実際にメラニンと結合するかどうか未検証であるため、今後より詳細に検討を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoの実証研究については、同系移植がんモデルを用いた解析に注力する。まずヌードマウスに対する皮下移植モデルにおいて、ゾンデを用いたメラニンの経口投与法を行い、有効濃度、期間、投与のタイミングを精査し、プロトコルを確立する。その結果を受け、C57BL/6マウスに対して、がん細胞を尾静脈注射するがん転移モデルを用い、転移抑制効果について検討を進める。一方、メラニンの受容体探索についてはがん細胞のほか、マスト細胞、マクロファージについても同様の方法で検討し、共通受容体として機能しているかどうか、またそれらがメラニンと直接相互作用するのかどうかを含めて検討する。 多数の検体を扱う動物実験には人手が必要であるため研究補助者を雇用し、データ取得の効率化を図る。
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Causes of Carryover |
マウスを用いた解析の一部を外部受託で行う予定だったが、毒性や有効濃度に関する予備検討を十分に実施して依頼することとしたため、本年度当該未使用額が生じた。次年度、これらの予備検討を早期に終了し、受託解析を実施する予定である。
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