2017 Fiscal Year Research-status Report
小さな運び屋、脂肪酸結合タンパク質の非アルコール性脂肪肝炎NASH改善の可能性
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17K19938
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Research Institution | Tezukayama Gakuin University |
Principal Investigator |
向井 貴子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 助手 (60701464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楠堂 達也 帝塚山学院大学, 人間科学部, 准教授 (00460535)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 脂肪酸結合タンパク質 / FABP1 / 非アルコール性脂肪肝炎 / NASH |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、NASHモデルマウスの作製とFABP1抑制法の検討を行った。 (1) NASHモデルマウスの作製:現在、様々なNASHモデルマウスが作製されているが、ヒトのNASH病態発症を完全に模倣したモデルは存在しない。そこで、本研究を遂行するために最適なNASHモデルマウスを精査した。その結果、高脂肪・高コレステロール食モデルがヒトのNASH病態発症に近いと考えられた。C57BL/6Jマウスに高脂肪・高コレステロール食を長期投与し、血中、肝中脂質、炎症および線維化マーカーの発現量、肝臓組織の繊維化を解析した。その結果、4ヶ月目で炎症および繊維化マーカーが有意に上昇し、8ヶ月目まで高値を示した。また、5ヶ月目以降でNASHに特徴的な肝臓の線維化が認められ、7ヶ月目から肝硬変に至る個体が生じた。8ヶ月目にブドウ糖負荷試験とインスリン負荷試験を実施したところ、耐糖能に異常がみられた。以上のことから、高脂肪・高コレステロール食の長期投与によるNASHモデルマウスを選択し、今後の研究を進める。 (2)FABP1抑制法の検討:これまでFABP1抑制法としてアデノウイルスを用いてきたが、アデノウイルスは免疫応答を引き起こすという欠点がある。そこで、免疫応答を起こさないin vivo遺伝子導入法としてjet polyethylenimine(Jet-PEI)を用いた方法を検討したC57BL/6Jマウスの尾静脈より、Jet-PEIを用いてFABP1抑制プラスミドを投与したところ、投与後48時間で肝臓におけるFABP1発現量はコントロールの約25%にまで減少した。次に持続時間を検討したところ、投与後1週間ではコントロールの約75%の発現量であった。以上のことから、Jet-PEIは持続性の面で課題が残るが、FABP1抑制法として有効であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題であるFABP1抑制によるNASH改善の可能性を評価する上で、適切なNASHモデルマウスの選定と作製、およびFABP1抑制法の確立は必須である。そこで、平成29年度は(1) NASHモデルマウスの作製、(2)FABP1抑制法の検討を行った。その結果、高脂肪・高コレステロール食の長期投与によるNASHモデルマウスは、肥満、耐糖能異常、炎症、繊維化など生活習慣病に起因するヒトのNASH病態に近い発症過程を経ることを確認した。また、FABP1抑制法に関しては、Jet-PEIを用いたFABP1抑制プラスミドの投与により肝臓におけるFABP1発現量をコントロールの約25%にまで減少することができた。しかしながら、Jet-PEIを用いたFABP1抑制法は、持続時間が短いため、複数回の投与が必要であることも明らかとなった。以上のことから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は昨年度に引き続き、(1) NASHモデルマウスの作製、(2)FABP1抑制法の検討を継続する。また、(3)NASHモデルマウスを用いたFABP1抑制効果の評価を行う。(1)NASHモデルマウスの作製:平成29年度に作製した高脂肪・高コレステロール食の長期投与によるNASHモデルマウスは、生活習慣病に起因するヒトのNASH病態に近い発症過程を経ることから、FABP1抑制効果の評価に適する。しかしながら、NASH病態に対するFABP1抑制効果を評価するには、複数のNASHモデルマウスを用いて検討することが望ましい。そこで、本年度は、一般的に用いられているメチオニン・コリン欠乏食によるNASHモデルマウスの作製を行う。 (2)FABP1抑制法の検討:平成29年度にJet-PEIを用いたFABP1のin vivo抑制法を確立した。しかしながら、Jet-PEIを用いたFABP1抑制法は、持続時間が短いため、複数回の投与が必要である。また、FABP1抑制レベルに個体差がみられる等の問題も見つかった。そこで、本年度は、FABP1の最適投与法として、副次的影響が少なく、持続性が期待できるアデノ随伴ウイルスを用いた実験系の構築を行う。 (3)NASHモデルマウスを用いたFABP1抑制効果:高脂肪・高コレステロール食の長期投与により作製したNASHモデルマウスを用いたFABP1の抑制実験を行い、NASH病態、およびNASH病態発症の予防・改善効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
理由 平成29年度はFABP1を抑制する方法として、Jet-PEIを用いた実験系を検討したが、持続性の点で十分ではなかった。そこで、FABP1の最適投与法として、副次的影響が少なく、持続性が期待できるアデノ随伴ウイルスを用いた実験系を計画したが、昨年度中に実施に至らなかった為、その構築費用の一部を繰り越した。 使用計画 アデノ随伴ウイルスを用いたFABP1抑制系の構築にかかる試薬および消耗品の購入費用に充てる。
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Research Products
(2 results)