2018 Fiscal Year Research-status Report
Search for compounds that control metabolic regulators in the brain
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17K19951
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
田口 明子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 部長 (80517186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田之頭 大輔 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 研究員 (80724575)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | インスリン受容体基質 / 糖尿病 / 老化 / アルツハイマー / 認知機能低下 / アルツハイマー病理像 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、中年期の生理的2型糖尿病モデルマウスが認知機能の低下を呈する際と、この障害が糖尿病治療薬メトフォルミンの慢性投与により改善される時、海馬Insulin Receptor Substrate 1(IRS1)の特定Serine(Ser)残基のリン酸化の増加が伴う事を見出したが(Tanokashira et al. 2018)、これらの特定Ser残基の活性化は、老化に伴う生理的な認知機能低下にも連動する事を見出した。 さらに、6ヶ月齢で認知機能の低下を示すことが報告されている次世代型アルツハイマー(AD)モデル(APPKINLGF)マウスの認知機能障害とIRS1の変化について解析を行った結果、アミロイドβ(Aβ)の蓄積が確認されるが、正常な認知機能を有する若齢(12週齢)APPKINLGFマウスの海馬で、IRS1の4つの特定Serのリン酸化の顕著な増加が起こっている事を突き止めた。一方、認知機能の低下を示す中年期以降のAPPKINLGFマウスの海馬でも、特定Serの活性化の一部は低く保持されるが、一部の活性化はキャンセルされていた。 これらの結果から、海馬IRS1の特定Serのリン酸化は、アルツハイマー病とは関係の無い糖尿病や加齢に伴う認知機能低下に連動するマーカー候補である一方、アルツハイマー病においては、認知機能低下に先じて起こるAD病理像のマーカー候補であることが示唆された(Tanokashira and Fukui et al. Under review)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、脳のIRS1以外の同メンバーに関与する化合物の探索を行う予定であったが、昨年度の研究成果を基盤に、その詳細を深く理解する事を目的として、更に研究を発展させた結果、新たな知見を先んじて得る事ができた。本研究成果は、現在、論文投稿中である事から、遠からず論文発表を行う事が期待できる。これらの経過から、当初の計画通りでは無いが、本課題の内容に関する研究としては、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
外部研究機関との共同研究により、タンパク質の構造・機能、相互作用解析、データーベース解析を含むバイオインフォマティクスおよび計算生物学研究を用いて、IRS1を含む同ファミリーメンバーをターゲットとしたヒット化合物の探索研究を行う。さらに、探索研究に続き、候補化合物が脳IRSsシグナルおよび認知機能へ与える影響について、多種の認知機能障害モデルを用いて、申請者が構築したマウスの解析系および追加解析によって精査する。
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Causes of Carryover |
昨年度論文報告をした認知機能障害および有機化合物ビグアナイド系糖尿病治療薬による認知機能改善に関与する脳IRS1のセリン残基に対応し、認知機能の変化に関与する脳IRS2の新規リン酸化領域を見出したため、外部機関との共同研究により、具体的なリン酸化部位の同定を行っている。解析結果は、ヒット化合物探索後の精査研究の重要な指標となるため、本課題の目的をより精緻に達成する追加研究として実施するため。
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