2020 Fiscal Year Research-status Report
非直交変換に基づく高速・高精度・安定な行列計算アルゴリズムの設計手法の確立
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17K19966
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 有作 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20362288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 悠輔 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (60709765)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 共役勾配法 / 前処理 / GPU / 固有値計算 / ブロックヤコビ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,共役勾配法のためのMILU(0)前処理の高性能実装と対称固有値問題の解法の2つのテーマについて,アルゴリズムの開発と解析を行った。
(1) 共役勾配法のためのMILU(0)前処理(修正不完全LU分解前処理)について,ブロック赤黒順序付け法に基づく並列化手法とその最適化の研究を行った。今年度は,GPU上での高速化に向け,(i) GPUのコアレスアクセスを可能とするためのデータ構造の最適化,(ii) ブロック分割方式と収束性との関係の解明,(iii) 高速化のための単精度演算利用方式の検討,の3点を行った。(i)については,節点の番号付けにおいて,各ブロック内の節点に連続的に番号を振るのではなく,ブロック番号を変化させたときに連続的に節点番号が変化するようにすることで,コアレスアクセスを実現した。(ii)については,MILU(0)前処理の収束性を評価する指標であるSRIに基づき,ブロックの形状を最適化した。(iii)については,前処理で用いる配列のうち,一部の配列のみを選択的に単精度化し,単精度で計算することで,倍精度と同等の精度を保ちつつ高速化が図れることを確認した。これらの最適化の結果,既存のGPU向けソルバであるGingkoやMAGMAに比べて,ポアソン方程式のモデル問題を高速に解けることを確認した。
(2) 対称固有値問題の解法としては,ブロックヤコビ法に基づく高並列アルゴリズムの研究を行っている。今年度は,昨年度提案した収束加速のための組合せ的前処理について,効率的な実装アルゴリズムを考案した。特に,貪欲算法とシミュレーティッドアニーリングとを組み合わせることで,ソルバ本体の実行時間に比べて無視できる時間で,十分な精度の近似解が得られることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究自体はほぼ順調に進展している。特に,MILU(0)前処理の並列化については,理論的解析と高性能実装手法の提案に基づき,従来法に比べて高速なGPU向け連立1次方程式ソルバを実現できた。本ソルバは,プラズマシミュレーション用のソフトウェアに組み込んで利用する予定である。一方,予定していた国際会議については,コロナ禍により海外出張が原則として禁止されたため,参加ができなかった。これに伴い,国際会議発表の後に執筆する予定であった一部の論文については,執筆が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,非直交変換を用いた各種行列計算アルゴリズムの提案と解析を行う。また,R3年度は,R2年度に参加できなかった国際会議に参加するとともに,研究全体のまとめとしてサーベイ論文の執筆を考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で,予定していた海外渡航が中止となり,研究計画を変更したため。
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