2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K19988
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
金澤 啓三 香川高等専門学校, 情報工学科, 教授 (40311097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 安季良 香川高等専門学校, 通信ネットワーク工学科, 准教授 (40290811)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 風の計測 / インタラクション / 磁気センサ / プロジェクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,息や団扇,スプレーなどで簡単に起こせる「風」をコンピュータに入力するインターフェイスの開発によって,これまであまりディジタル活用されていない「風」の情報源としての活用を目指すものである。提案する風の検出インターフェイスは,風の強弱を2次元的にセンシングするエリアセンサ及び,その入力結果を用いてインタラクションを行う投影システムからなり,風を受けるためのフィルムの先端に取り付けた磁石の動きを磁気センサを用いて計測するという手法を用いている。この機構を格子状に並べ,センサが受ける風の風圧を2次元分布として計測するものである。本研究では,これらのインターフェイスの評価に基づく各種アプリケーションへの利用拡大を目指す。 平成29年度には,試作システムを用いた風の検出インターフェイスの検出特性の評価を行い,試作システムの問題点を明らかにした。試作システムでは,磁石付きフィルム及び磁気センサを用いた検出機構,縦24行×横32列の計768個を格子状に配置した構成となっており,各センサ当たり12ビットでディジタル化された磁界強度を毎秒30回取得することができる。本研究によって風速とセンサ値の関係を測定し以下の結果を得た。1)風の強弱とセンサ値の関係をモデル化することによって,出力値から入力された風速に換算することが可能となった。また,検出可能な風速の範囲を明らかにした。しかしながら,フィルムや磁石の取り付けの不均一さから,個々の検出機構の出力の個体差が大きいという問題点も明らかとなった。2)検出面の前面にはインタラクションを行うための映像を投影する網目状のスクリーンを配置している。このスクリーンの評価では,風の通過性能及びスクリーン素材としての反射輝度は単位面積当たりの開口度に依存することが示された。これにより,投影プロジェクターの選定において必要な明るさが算出可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に風の強弱を計測して可視化するシステムを製作したが,風の検出性能や投影システムとしての定量的な評価を行っていなかった。平成29年度には,これまで開発した試作システムを用いて,風の強弱に対するセンサ出力値や検出可能な風速範囲などの風の検出能力の測定及び投影システムとしてのスクリーン素材の評価を実施した。また,平成30年度に実施を計画していたUnity上でのセンサデータを取得するソフトウェアの開発を一部前倒しして行った。風の検出機構については申請時に提案したフィルムと磁石及び磁気センサを使用することから変更はない。測定実験から磁気センサの出力値は,磁石と磁気センサの相対位置やフィルムの弾性的な特性によって変化し,風速と出力値の関係を明らかにした。この結果によってセンサ出力から入力された風速を算出することが可能となり風の2次元計測機器として機能することが確認できた。これらの成果については1件の国内学会での口頭発表を行った。しかしながら,その過程において,現状のフィルム形状ではセンサ背面にスムースに風が流れにくく検出面が風の通過を妨げていることから近接するセンサへ影響を及ぼしていることや,個々の検出機構の出力値のバラツキが大きく,バラツキの低減を行わなければ精度の向上に限界があるなど構造上の課題も明らかになった。この結果を受けて,平成29年度中に実施計画のあった「背面からの風の検出」については着手を見送っている状態である。このことから平成29年度の取り組みは「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時には平成30年度の実施内容として平成29年度の評価実験に基づくセンサの改善と提案していた本インターフェイスの活用を促進するためのソフトウェアの開発を計画していたが,平成29年度の評価実験の結果を反映させ,風の検出センサの精度向上のための改善を優先して実施するよう計画を見直したい。これは,平成29年度の評価実験において,さらなる検出精度・分解能の向上には,製作方法も含めた設計の見直しを図ることを優先的に行う必要が生じたためである。 個々の風の検出機構の出力値が不均一な要因には,フィルムの加工誤差やセンサ・磁石の取り付け位置など検出機構の加工に伴う様々なバラツキ因子が考えられる。試作システムでは手作業で行っていた製作の一部を加工機等を用いて加工精度を向上させると共に,定量の風速を送る送風機を走査し各センサの検出特性を計測することによって,個々のセンサに応じたキャリブレーションを行う機構を持たせることを検討している。 また,試作システムでは検出面がほぼフィルムで覆われているため,背面への風の流れが遮断されてしまっている。これは近接するセンサの出力値に影響を及ぼし,空間分解能の低下に繋がっていると考えられるため,フィルム形状を検討し分解能の向上を目指す。 これらの改善を行い,風の検出性能を再評価して風の2次元検出器としての精度向上を図り,その成果を学会等で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度の研究計画を実施するに当たり,必要となった風速計及び送風機については本助成金採択前に別予算で購入した単点式風速計及び現有の送風機を使用したため残額を生じた。しかしながら,当該年度の研究成果から試作システムの入力特性が明らかになり,各々の風の検出機構の不均一差を改善することが課題となった。これに伴い,同時に複数箇所の計測が必要となることから,平成30年度には計測実験を効率的に行うためにも当該年度に購入予定であった多点式風速計及び無断階で風量を調節可能な送風機を購入し,より詳細な計測環境を整備する計画である。さらに,これらの結果により当初計画にあったセンサ及びインターフェイスの再設計を行う予定である。
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Research Products
(1 results)