2017 Fiscal Year Research-status Report
視覚的特徴の乏しい物体の検出を可能にする特徴量の探索と原虫類種同定への応用
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17K20025
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉高 淳夫 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60263729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
所 正治 金沢大学, 医学系, 准教授 (30338024)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 寄生虫 / 顕微鏡写真 / 大域・局所的特徴 / 空間周波数 / 画像とDNA情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
顕微鏡画像を対象とした虫体識別処理に関して、本課題実施前の調査段階では虫体領域を入力画像より主観判断により領域分割したものに対して局所特徴量表現に基づく識別処理の有効性を調査してきた。そのため本年度はまず、虫体の大域的特徴表現、すなわち外部形状をHOG特徴量の2次元マトリクスとして表現し、そのスケールとアスペクト比を変化させつつ画像上での探索領域をシフトさせながら評価関数により適合度を測り虫体領域を検出するアルゴリズムを実装した。 虫体領域検出後、その内部領域に対しては、式操作に関する特徴量は虫体識別に対する有効性が高くないため、空間周波数の視点から特徴づけることを検討し、フーリエ変換、ハイパスフィルタ処理の後、主成分分析を適用することにより局所的特徴を表現するアルゴリズムを設計し、実装した。上記手法をシストイソスポーラ等8種の原虫類画像に対して適用したところ、ほとんどの事例に関して本課題実施前の予備調査段階を上回る検出精度を得ることができた。 寄生虫データベースの構築、整備に関しては、臨床検査及びインドネシア、アフリカでのフィールドワークの際の寄生虫顕微鏡検査において、各種寄生虫の画像および遺伝子を収集した。具体的には、臨床検査では、シュードテラノバ(腸管外アニサキス症病理画像)、口腔トリコモナス、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)、腟トリコモナス、戦争イソスポーラの新規画像とDNAデータをセットで収集した他、フィールドでは、大腸バランチジウム、エンテロモナスについて新たなデータセットの収集をおこなった。これらのサンプルのうち、シュードテラノバについては、英文と和文で、また、口腔トリコモナスについては和文で論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
虫体分割処理に関しては、虫体以外の背景のコントラストが低い状況や、背景中の他物体が相対的にアウトフォーカスである場合には良好に虫体を分割で来ている。しかしながら、虫体が他の細胞等と重なっている場合、空間周波数の観点からの局所的特徴に大きな差が表れない事例もいくつか判明しており、その理由の分析と精度向上のための改善手法の検討を進めている。 虫体領域分割処理後の種の識別処理に関しては、SVMを始め4種類の判別アルゴリズムによる識別精度の違いについて評価実験を進めており、本課題で対象とするような、視覚的特徴が相対的に乏しい対象物に対する識別精度の優劣を評価した。 これらに加え、深層学習により種の識別に有用な特徴量の抽出と、その特徴量に基づいて種の識別処理を実行する手法の優劣についても調査を進めている。 寄生虫情報データベースの構築整備に関して、臨床およびフィールドワークでの画像取得は順調に進行している。一方、これまで分子同定によって種鑑別を実施し、なおかつ培養株が成立している腸トリコモナスとレトルタモナスについては、共焦点レーザー顕微鏡を用いたZスタック画像取得のために、蛍光抗体染色の最適化を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
虫体検出処理に関しては、大域的特徴として虫体の外形をHOGのマトリクスとして表現しているが、部分的に微小な形状特徴の相違がある虫体間の識別を大域的特徴量表現のレベルで可能とするよう、特徴量表現法の改良を検討していく。また、虫体のスケールに関する一貫性を制約とすることにより、局所特徴量が類似している対象虫体以外の背景物の誤検出を抑制する処理についても検討する。 虫体識別処理に関しては、現在は空間周波数に関する局所特徴量を画一的なハイパスフィルターを適用した後にクラスタリングして得ているが、空間フィルタの適用方法やそれに伴うクラスタリングのアルゴリズムを改善するとともに、深層学習による特徴量抽出と、それに基づく虫体分割、識別処理の有用性や、上記処理との統合についてさらに研究を進める。 虫体情報データベース構築関連では、培養株や固定サンプルをZスタック画像としてZ軸方向の多数画像で撮影し、従来の画像取得では十分に考慮されてこなかった、フォーカス位置の違いによる虫体の視覚情報の変化を考慮した画像処理による認識精度の改善を図れるようにする。そのために、共焦点レーザー顕微鏡による蛍光画像の他、微分干渉像などについても画像取得を進め、様々なモードによる画像データの充実を図る。
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Causes of Carryover |
購入機器、消耗品の実購入額が当初予定よりも安価に購入可能であったことと、予想した数量よりもやや少なめであったことによる。次年度は画像データ等の取得が当初予定以上に順調に進むことが見込まれるため、次年度ではそれに対応するための消耗品等購入並びに国際共同研究相手方との打ち合わせのために使用予定である。
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Research Products
(10 results)