2017 Fiscal Year Research-status Report
深度可変アレーセンサによる生体偽装物検知高度化と生体電磁マッピング照合技術の創成
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17K20033
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前田 忠彦 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40351324)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 生体検知 / 生体認証 / 指紋認証 / 電磁応答 / FAR / FRR / 偽装物 / CSRR |
Outline of Annual Research Achievements |
指紋認証において指紋を模倣した偽装物を用いた「なりすまし攻撃」に対して,攻撃者が指表面に偽装物を装着した指 (偽装指) を検出する機能を有する指紋認証システムが必要である.本人確認を目的とした指紋認証技術に加え,検知対象物が生体か否か判定するための生体検知センサを統合した指紋認証システムの開発および判別アルゴリズムによる高精度化に取り組んだ. 人体と偽装指を判別するアルゴリズムとして, テンプレートデータの分散特性を用いた一致性関数を導入した判別方式および周波数特性への重み関数の導入を提案した。生体検知特性を分析するためにFRR (False Rejection Rate) およびFAR (False Acceptance Rate) による評価を行い, 検知精度向上を確認した. また, CSRR構造の配置条件による検知特性について評価を進めた.配置条件を直列型から同軸型へ変更することで指の密着不足による誤検知低減が期待できるため, 同軸型に配置した構造を提案し,実験的に評価した. この実験では検知が困難である皮膚ファントム(0.3 mm 厚)に対する評価を実施し,従来の直列配置に対して誤検知低減による検知精度の向上を確認した. 生体検知センサの作製精度が検知精度に与える影響の評価では, 作製精度が異なる同軸型生体検知センサを複数作製し,テンプレートを登録するセンサ (以下 登録センサ)と人体指,偽装指を検知するセンサ(以下 検知センサ)を同一のセンサとしない条件下において実験を行った.その結果,偽装指がシリコーンゴム (0.3 mm 厚 ) と仮定した場合であっても人体指テンプレートを用いたデータ処理を行うことで,センサが一定程度の寸法誤差を持つ場合においても弁別精度が維持できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センサ構造の最適化と作製精度による検知特性の評価では,CSRR構造の配置条件の変更による生体検知特性への影響を検討した. 将来の2次元配列型センサ構成のための単位センサ構造の研究として,従来の直列型配置を改良した同軸型配置構造を提案した.提案センサ構造は人体の密着不足低減による誤検知低減が期待され,次年度以降の配列化および高誘電率基板への形成に向けた研究に適用してゆく. また,この同軸型生体検知センサを複数枚作製し, センサ作製精度による生体検知特性への影響を確認し,実用化を視野に入れたプロセスで実現可能であるセンサ寸法誤差では, 検知精度への影響が小さいことを実験で確認している. 高度偽装物による攻撃対策のためにテンプレートデータに用いる電磁応答特性の分散特性と偽装指の電磁応答特性に着目し, テンプレート分散特性を用いた判別アルゴリズムについて検討した.具体的には,電磁応答判別アルゴリズムに用いる平均差の算出に際して電磁応答特性に重み関数の導入を検討した. 人体指紋を偽装する高度偽装物として選定した0.1 mm 厚のシリコンゴムに対する電磁応答特性変化について分析し,これを考慮した周波数依存性のある重み関数を設定することで検知指標の1つであるFRRを改善できることを示した.これらの新しい提案評価指数に対する誤検知特性を分析することで,次年度以降に高精度データ多元解析・検知技術に適用してゆく. さらに, 指紋認証システムとの統合と実用化に向けて、指紋認証ソフトウェア開発キットを用いて指紋認証処理と生体検知処理を行うソフトウェアの開発を進め,基本判定部分をソフトウェア上に実装した. 現在,高度判定アルゴリズムと多元・複合判定アルゴリズムをソフトウェア上に実装する開発にも着手している.
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Strategy for Future Research Activity |
生体検知アルゴリズムに関する研究では,評価指数である類似度及び平均差の算出において用いられる測定値は通過特性のみだが,位相や反射特性など人体指と偽装指の差異を検出することができる可能性のある特性を検討し,生体検知精度を高める評価指数の算出手法の開発に努める.また人体指と偽装指を判別するための閾値の選定を行う処理アルゴリズムの開発を進め,固定した閾値における生体検知精度の評価を行う. 一方,検知対象指のセンサへの接触から密着および分離の時間的推移に対応する過渡応答特性と偽装物の粘度などの物理特性への影響を検討し,高度偽装物検知技術への適用可能性を探索する. 指紋認証技術との統合化に関する研究では,生体検知技術を併用した指紋認証システムの開発において指紋認証技術と生体検知技術を統合化したデバイスが必要である.認証方式をスワイプ式とするため指紋認証センサと生体検知センサのスワイプに適した一体化を図る構造の検討,筐体及び固定冶具の材質の選定を行う.更に一体化による電界分布の変化が生体検知センサの特性に与える影響についてシミュレーション及び実験的評価を行い実用化に向けた統合型センサの開発を進める. また,現在は生体検知センサの同軸ケーブル接続端面において校正基準を用いた校正後に生体検知を行っている.しかしながら,実用化の際に校正基準を組み込むことは困難であることが想定されるため,生体検知センサに対する自律分散的な校正法の開発を進める予定である. さらに,無線装置のシステムLSIへの組み込みを想定した判定用高周波回路ブロックの基本設計を進めてゆく予定である.これらに加えて動的電磁応答特性の保存に適用するための電磁応答データ圧縮技術について検討を進める予定である.
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Research Products
(5 results)