2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K20040
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄飛 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 任期付研究員 (50708120)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 放射性炭素同位体 / 泡 / 粒子化 / 難分解性溶存態有機物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、難分解性溶存態有機物が泡にトラップされ、粒子化する可能性を検証するものである。初年度および2年目においては、静岡県下田市近辺で採取した泡と有機物の複合体に対して放射性炭素同位体測定と脂肪酸組成の測定を実施した。これらの結果として、泡にトラップされる有機物の年代はほぼ現世のものであることが示された。これは、生産直後の有機物が泡に取り込まれていることを示しており、当初の予想とは異なるものではあったが、海洋表層の有機物のダイナミクスに泡が関与していることを示すものとなる。 そこで、本年度には粒子化に関与する可能性が考えられる粘着性の有機物に着目し、その量的変化と泡による有機物の粒子化の関係を検証した。その結果、泡による粒子化の程度と炭水化物の量的関係は明確でなく、泡への有機物のトラップは非選択的である可能性が示された。これは、2年目に実施した脂肪酸の測定結果とも整合的である。さらに、有機物の組成を包括的に解析するため、熱分解GC-MSを利用した分析も実施した。その結果も、泡に含まれる粒子と海水中の有機物に明確な違いは見られず、非選択的な凝集が示唆された。 また、初年度および2年目には主に静岡県下田市で実験を行ってきたが、有機物の海域間における違いを考慮するため、「波の花」と呼ばれる泡で生じる凝集現象が見られた青森県および石川県において試料を採取した。これらの試料の放射性炭素同位体については、測器の故障によって測定が遅滞しているが、前処理は既に終了していることから測器回復後に速やかに測定を進めることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射性炭素同位体の結果は、当初仮説として予測していた難分解性溶存態有機物の粒子化を示すものでは無かったが、脂肪酸組成や炭水化物の測定から現世の有機物が非選択的に泡にトラップされているという可能性が示され、泡による粒子化が表層の有機物のダイナミクスに大きく関与するという新しい知見が得られた。すなわち、計画の軽微な変更は伴いながらも、泡による粒子化の過程を明らかにするという当初計画に沿った研究が遂行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目までは主に、応募者の所在する静岡県下田市の海水を用いて実験を実施してきた。しかし、現世の有機物のダイナミクスに関与するという結果は、海域間の生物群集の違いなどによって粒子化する有機物が大きく異なることを意味している。そこで、冬季に泡による凝集体(波の花)が観察される、青森県および石川県で試料を採取した。放射性炭素同位体測定に関しては、測器の故障に伴う遅滞しているが、回復後にそれらを測定するとともに、脂肪酸測定や熱分解GC-MSを用いた有機物組成の解析も実施していきたい。
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Causes of Carryover |
放射性炭素同位体比の測定は、加速器質量分析計を用いた測定が必要となる。原子力開発機構に分析を依頼しているが、測器の故障に伴い測定が先延ばしになっている。その測定に必要な予算を来年度の使用に繰り越した。
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Research Products
(1 results)