2017 Fiscal Year Research-status Report
Structure Biology Study on Effects of Hyperthermia on Ku: Evolution From DNA Damage Repair to Protein Damage Repair
Project/Area Number |
17K20042
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 義久 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (20302672)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 温熱 / 放射線 / DNA修復 / Ku / 円二色性分光 / タンパク質変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Kuタンパク質とは、DNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)とともに、DNA二重鎖切断損傷のセンサーとして、その非相同末端結合(NHEJ)による修復おいて極めて重要な役割を担う分子である。研究代表者は、以前の研究においてKuタンパク質の活性が40-44℃の温熱処理によって低下することを見出し、また、細胞においてDNA-PKを温熱の影響から防護・回復する仕組みが存在することを示した。本研究は、Kuタンパク質の変性、失活の原理と、これに対する防護、回復のメカニズムを明らかにすることを目的として行った。 本年度は、まず、Kuタンパク質の調製と円二色性(CD)分光計測(広島大学放射光科学研究センター、HiSORにて実施)による二次構造解析の予備的検討を行うことを目的とした。Kuタンパク質の調製についてはバキュロウイルスを用いた発現系の構築を試みた。また、CD分光計測については、KuとともにNHEJに関与するXRCC4を用いて条件検討を行った。試料用緩衝液の濃度や組成の影響に関する情報が得られた。また、25-55℃の範囲で温度を変化させた場合、さらに、一旦55℃まで温度を上昇させた後、25℃に戻した場合の二次構造変化についてのデータを得ることができた。 さらに、他のDNA二重鎖切断修復タンパク質に対する温熱処理の影響を検討し、XRCC4の結合分子であるDNA ligase IV、もう一つの修復系である相同組換えに関わるBRCA2が温熱の影響を受けて、不溶化、分解などを受けることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Kuタンパク質の調製については、発現系の検討に時間を要したため、予定より遅れたが、一方、CD分光計測については、大量発現系が確立し、同施設(HiSOR)での測定実績があるXRCC4を用いることで、温度の影響まで調べることができ、試料用緩衝液の濃度や組成の至適条件が得られた。また、DNA二重鎖切断修復に関わる他のタンパク質に対する温熱の影響に関する知見も得られたことで、2年目の研究の展開が期待できる。全体的にみれば、概ね当初予定と同等の進展があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、Kuタンパクの調製を速やかに行い、調製ができ次第、HiSORにおけるCD分光計測を行いたい。この際、平成29年度のXRCC4測定で得られた結果や情報を最大限活用する。BRCA2の温熱による減少は報告があり、遺伝性の乳癌、子宮癌治療の観点からも注目を集めている。特に、PARP阻害剤との併用効果が期待されている。DNA ligase IVの不溶化は現在のところ新たな知見である。Kuと合わせて解析することで、温熱に対する防御、回復機構のメカニズムにより近づきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
物品費については、高速液体クロマトグラフィーシステムがキャンペーンにより当初予定より安価となり、さらに、他の科研費と合算したため、本科研費からの支出が40万円程度少なくなった。また、Kuタンパク質の発現系の検討を時間をかけて行い、必要な遺伝子組換え実験試薬(計40万円程度)などを平成30年度に購入することとした。旅費については、広島大学放射光科学研究センター共同利用研究に採択され、旅費が支給されることとなったため、学会発表のみの支出となり、当初より20万円程度少なくなった。また、研究補助も29年度は必要としなかった。平成30年度は上記の遺伝子組換え実験試薬等が必要となるが、それでも本年度の未使用額には満たない。これについては、最新技術の導入、研究補助や受託サービスの活用によってより研究の進展を図るとともに、国際学会での発表による情報発信、収集の強化などに活用したいと考えている。
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