2018 Fiscal Year Research-status Report
堆積物中の環境DNAを用いた浮魚類の個体数復元に関する研究
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17K20045
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土居 秀幸 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (80608505)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 魚類 / 環境DNA / 別府湾堆積物 / イワシ類 / マアジ |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化により,サケ、サンマ等の浮魚類の分布は大きく変わることが予想されているが、その根拠・参照とすべき過去の温暖な時期における分布範囲については、その痕跡となるウロコ等の遺骸がほとんどの場合海洋堆積物中に残っていないため、これまで何の情報も得られていなかった。本研究では、過去の海洋生物の分布範囲の解明に今後期待が寄せられる堆積物中の環境DNAに着目し、日本列島周辺の有用魚種を対象に堆積物中の環境DNAが過去の浮魚類個体数を推定する方法として有用性があるかについて明らかにする。 本研究では、カタクチイワシ・マイワシ・マアジについて別府湾堆積物から実際に環境DNAが検出されるかという点と鱗濃度や鱗堆積量、漁獲量との間に類似した変動を示すかどうかという点に焦点を絞って研究を進めてきた。平成29年度では、すでにカタクチイワシやマアジのプライマーを使って定量PCRで堆積物中の環境DNAの増幅と定量に成功していたが、平成30年度ではマイワシのプライマーを新たに開発し、マイワシについても海洋堆積物中から環境DNAが増幅と定量に成功した。本研究によって、環境DNAが約300年前の堆積物中に存在することが明らかとなった。また、環境DNA量と魚鱗濃度や漁獲量との間の関係を調べたところ、マイワシとマアジについては数十年規模の類似した変動を示し、魚の動態が環境DNAにより把握できる可能性が見えてきた。 一方、カタクチイワシについては、魚鱗濃度と類似した変動を示さなかった。このことは、魚鱗とDNAはそれぞれ異なるシグナルを見ていることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、カタクチイワシ・マイワシ・マアジについて別府湾堆積物から実際に環境DNAが検出されるかという点と鱗濃度や鱗堆積量との間に類似した変動を示すかどうかという点に焦点を絞って研究を進めてきた。3種とも、定量PCRで堆積物中の環境DNAの増幅と定量に成功し、海洋堆積物中から魚の環境DNAが存在することが本研究で初めて明らかとなった。また、どの種も環境DNAが約300年前の堆積物中にも存在することや、魚鱗・漁獲記録との間に数十年規模の類似した変動を捉えることができた。概ね予想した通りの結果が得られた。 マイワシやマアジは単位重量当りのDNA量が少なく、定量性に改善の余地があること、カタクチイワシについては魚鱗濃度の時系列変化との不一致の原因を突き止める必要がある等の課題が残ったが、概ね研究課題の目的は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
課題として、低濃度のDNAの回収率をあげることで、定量性を高める必要がある。そのために、大容量試料を用いた抽出法を開発する必要があること、PCR阻害物質の除去を行う必要がある。現在、その開発を進めている。
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Causes of Carryover |
課題の目的は概ね達成できたが、DNAの回収率が低く、希少種の定量性にかけることが課題であった。次年度では、その課題に挑戦するため、試薬等の消耗品が必要である。
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Research Products
(3 results)